Life Shift

2017.03.02

「鬼速PDCA」著者が語る、早く、正しいPDCAの回し方

生産性の向上をテーマに掲げるリクルートライフスタイルは、定期的に「ガリトーク」というイベントを開催している。今回は、生産性向上に必須のスキルのPDCAについて、『鬼速PDCA』の冨田和成さんにお越しいただき、「いかにはやく、正しいPDCAを回すのか」をテーマにイベントを実施。Life Shift読者の方々にもお役に立ててもらえる内容もあるのではないかと、ここではその様子を全文掲載する。

PDCAが世間では勘違いされて伝わっている

冨田:よろしくお願いします。株式会社ZUUの冨田和成と申します。本日は少しでも伝えられる話があればいいなと思います。『鬼速PDCA』という本がきっかけで、こうやって講演する機会をいただきました。一時期はAmazonのKindleと書籍のビジネス書ランキングでダブル1位を獲得していました。いろんな書店でも平積みいただいてありがたいなと。この本の内容と、リクルートライフスタイルからテーマでいただいている「取捨選択」の話を交えながら、お話していけたらと思っています。

私自身のバックグランドは、大学時代は学生起業。その後は野村證券で丸7年の間、支店営業をやった後に本社のプライベートバンク、超富裕層向け部門に勤務しました。その後、シンガポールでビジネススクールに行かせてもらいながらプライベートバンクや経営戦略をやり、日本に帰ってきて起業をしています。

3年9カ月前に会社を起業しました。いまは月間300万人以上の読者が集まる金融経済メディア「ZUU Online」や、金融×ITのフィンテック領域の事業をやっています。

今日はどのようにPDCAの改善サイクルをまわしていくかについてお話します。本プロジェクトでも「生産性」がテーマだとお聞きしています。そこに絡めながらお話できればと思います。

まず、PDCAサイクルっておそらく聞いたことない人はいないだろうと思います。世に言う、Plan→Do→Check→Actionですね。私はちょっと違うように捉えていて、世の中にPDCAが勘違いされて伝わっている、皆が陥りがちなポイントがあるなと。「PDCAとはなんぞや」という人の多くは、改善サイクルを回すことだろと、抽象的に捉えていることが多い。

「実際にPDCAサイクルが回るとは、どういうことなのか」を分解したのが今回の書籍でした。まず、なぜPDCAに注目しているのか、その理由から語ります。

ls_main01

ビジネスモデルとビジネススキルがコモディティ化している

今の世の中は正解がどんどん変わる、変化が激しい時代です。変わる前に先手を打てる先見の明があれば理想的ですし、未来に備えてスキルを身につけておくことが大事になります。でも、そうじゃなくても大丈夫です。変化を察知し、順応することができれば十分。そのためにPDCAを回す能力が必要なんです。

コモディティ化という言葉がこの数年でよく使われるようになりました。コモディティ化は価値がなくなるみたいな時に使われますよね。「英語がコモディティ化した」みたいな表現をします。英語って結局ツールだよね。これをどう活かすかのほうが重要だよねみたいな話も同じです。

ビジネスモデルもビジネススキルもコモディティ化してきています。そのビジネスモデルがすごいから勝てるというわけでもなく、そのビジネススキルを持っているから勝てるというわけでもない。PDCAサイクルを活かす先は、新しいビジネススキルを身につけることや能力をあげる部分にあるのかなと。

では、ビジネスモデルのほうでは何が起きたのか。1900年頃、1985年、2016年8月の世界の時価総額ランキングを見てください。2016年8月にはApple、Alphabetが圧倒的トップに。つい100年前までは重厚長大な鉄道やオイル、スチールが上位に。30年前になるとインテルやエクソンが出てきて、GEとかがランクインしています。ちょうどバブルの前は日本企業もTOP10に入っている。世界のグローバル経済の中で最盛期ですよね。でも、エクソンモービルだけは残っているけれども、2016年8月にはIT企業が総なめです。

ひとつのビジネスモデルがすごかったとしても、世の中に伝達するスピードがはやい現代では、すぐに陳腐化してしまいます。あるビジネスモデルが発明されても、あらゆる言語に翻訳されて世界中に出回ります。一昔前までは中国企業は海外のビジネスモデルを模倣しても質が悪いと言われていたけど、今や中国企業はビジネスモデルを真似したら、もともとの企業よりすごい商品やサービスにしていってしまう。情報の伝達スピード以外にも、3Dプリンタの登場などで、面白いようにすぐにコピーができるようになっている。

何が差別化になるのかというと、変化し続けられる力だと思っています。新しいビジネスモデルを生み出し続けるのもそうだし、他者が追いついたときにはビジネスモデルの洗練度で先に行っていればいいんです。

リクルートさんも分社化しましたが、AlphabetとしてGoogleがホールディング化しましたよね。こういう形にしたのも、シリコンバレーのGoogleで働いていた一線の人間が、起業して出ていってしまう。すると、Googleの人材価値が低下してしまうので、彼らを囲い込んだり、採用したりするにはどうするかというと、ホールディングス化して、子会社社長としてだが起業家にしてしまう。どの会社もGoogleの傘下にあるんですけれど、経営者がたくさんいる状態。

Googleはビジネスモデルがすごいのではなく、組織モデル(オーガナイゼーションモデル)がすごい会社。そこがすごいから新しいビジネスモデルを生み出し続けられる。柔軟に洗練させていくのが得意な会社です。つまり組織のPDCAですね。

個人にとっても、組織にとっても、PDCAまわすことは重要です。AIが台頭した時に、何を担っていけばいいのか。その時に重視することや大切にするポイントは変わる。なので、PDCAを回して変化し続ける力が重要だと考えています。

PDCAは全てのビジネススキルを伸ばすための裏側にあるもの

ls_main02

PDCAとビジネススキルは、次元の違う概念です。PDCAは個別のビジネススキルとは別の次元、個別のビジネススキルの学習を加速させるものです。PDCAスキルがあがると、タイムマネジメント、チームマネジメント、問題解決能力が改善する。PDCAサイクルは、ひとつのビジネススキルというよりも、ビジネススキルの裏側・ベースにあるものです。

PDCAスキルを磨き、一つひとつのスキルがあがっていくと、この図の中の線の傾きがあがります。はやく身につければ、日々のサイクルの中に入れられるので、全てが加速度的にあがりやすくなりますね。

世の中でPDCAは勘違いされているんです。よくある勘違いを7つ挙げたのですが、その中で「管理職向けだと思われている」という勘違いがあります。別に管理職向けのものではなく、個人のフレームワークであり、個人が活用できるスキルです。仕事だけではなく、プライベートでも活用できます。

「失敗の原因は検証である」と考える方がいます。PDCAのC(Check)の部分。失敗の原因の半分以上はPlanです。次の3割がDoです。残り2割がCheckとAdjustです。

PDCAサイクルは課題解決だけではなく、良い点を伸ばすことにも使える

また、PDCAサイクルは課題解決のフレームワームと思われていますが、語弊があります。悪かったから改善することだけではなくて、良かった点を伸ばすサイクルにもなります。

世の中で課題解決と言われると、課題がなければやり方を見直す必要ないんだと思われがちです。でも、良かった点を伸ばしたほうが、課題解決より良い点もありますよね。PDCAサイクルは良かった部分を更に伸ばすフレームワークでもあるわけです。

最後にもう一つ、PDCAで陥りやすいこと。目的がないPDCAは、あり得ません。目的がない目標はあり得ないじゃないですか。なぜ目標を達成しなければいけないのか、必ずWhy、目的がありますよね。目標から始まると勘違いしてはいけない。目的から始まって、目標に落としていくものです。

『鬼速PDCA』でActionではなくAdjustになっている理由

ls_main03

鬼速PDCAサイクルでは少しだけ違う点があります。実行サイクル、Doの中だけでぐるぐるまわるものであることと、最後のActionになっているところはAdjustにしていることです。

先ほどお話したように改善だけではなく伸長、良かった点を伸ばすことが必要になってくるからなんです。
一つ例をあげます。私はプレゼンが別にすごく得意なわけでも、苦手意識があるわけでもないです。あるプレゼンターが「プレゼンのPDCAをまわしたい」と考えて、聞いてくれている方たちに、なるべくわかりやすいように、そして思いも含めて伝わるようにしたいと思っているとします。一方で自分は話が苦手であるという方が、スライドの作成が得意であるとします。彼はスライドのスキルを伸ばすのか、話すのが苦手だから話すのを改善するのか、どちらがいいと思いますか?

多くの人は話す勉強をすることで、苦手な部分を改善しようとしますよね。でも、何も話せなくても「次のページはこれです」みたいに、一目瞭然レベルのスライドをつくれるのだったら、そのほうが最終的な目標に近づけることがある。多くの人がその点を考慮していないんです。

改善と伸長には、いい面も悪い面もある。最後のActionをAdjustに変えているのはそこに理由があります。あと、DoとActionが混乱しがちになるので、あえてわけるようにAdjustを使っています。

タスクをこなそうとした時に躓く3つの原因

続いて、PDCAサイクルの各フェーズについて見ていきます。具体的にPlanから見ていきたいと思います。よく計画フェーズで失敗が起きます。ここでは最終的に到達したい山頂を決める。山登りをしている時に到達したいのはどこなのかという話です。

ゴールがないと何も始まらないですよね。それに、定めるゴールというのはできるだけ具体的であるべきです。高い山に登るという曖昧なものではなく、一年後の今日にあの山の頂にたつと具体的に決めましょう。

ゴールをはっきりすることで現在地とのギャップが明確になり、ギャップが見えれば、自分がこの1年間でなすべきことがわかります。数々の課題やとるべきルートがみえてくる。その課題が見えてきたら、解決するための大まかな方向性を考えます。そこまでやって計画が終わると。

ゴールが遠すぎると課題が見えにくい場合もあります。あれもこれもそれも課題だとなってしまう。全ての課題を解決するには、自分の人間性から変えてかなければいけないという話になたっりしてしまう、それじゃ長すぎ、抽象的過ぎです。なので、ゴールを設定する時は、期日、期限を決め、今の状態とのギャップを考えます。そのギャップだけを最短距離で埋めていきましょうと。

明らかに課題だとわかっていることにはすぐ着手し、わからないことは仮説を立てて動きながら計画の精度をあげる。遠ければ、仮の仮説をつくって進めていきましょう。

このプランの中で重要な考え方は、人のモチベーションに関する話です。多くの社員の方には、上司の方も部下の方もいると思うんですけど、人が不安や疑問を感じ、歩みをとめるのはこの3つの原因が大きいのかなと思っています。

1.自分はどこへ向かおうとしているのか、ゴールが見えなくなること
2.今の努力は意味があるのか、ゴールまでの道が見えないこと
3.この方法のまま続けて良いのか、道まではわかったけれど前に進む手段が見えないこと

そもそもゴールが大阪なのか、沖縄なのか、北海道なのか、目的地によってそれぞれ違う行動をとるはず。ゴールがわからないと道が見えない。道が見えたとしてもどうやっていくのか、という手段も次に考えなければいけません。歩いていくと時間がかかるし、自転車でも遠いよなと。沖縄と北海道だったら飛行機だよな、大阪だったら新幹線だよなとか。

時には逆走しているように見えることもあります。でも、ゴールが明確で、道がわかって手段が見えてくると、正解が明確なんで自信をもってそのルートを歩めると。遠回りしているんじゃないかと思われがちだが、明確だから迷わないで目的地に辿り着けるんです。

ちゃんとゴールは見えていますか。ゴールが見えると現在地とのギャップがわかるので。その後は、道が見えていますか、手段は見えていますか。一つひとつが明確になると、一人ひとりが思いっきり行動できるわけですね。

ls_main04

具体的にKPI、Do、ToDoを設定する方法

計画は、思い切って走るための準備でもあるわけです。計画フェーズは8つのステップになっています。ここは具体的にやってみましょう。今日は営業に関わる方が比較的多いという話を聞いているので、この話をします。

私は前職で営業していたのですが、営業が得意じゃなかったんです。得意じゃないし、なんでテレアポとかやらなきゃいけないんだと思っていた。なぜ今の時代にこんなに非効率な営業方法なんだろう。大学でITで起業して野村證券に入ってから、すごく思いました。

でも、非効率っぽいことをするほうが開拓できたりするわけです。まずは、営業を徹底してプロセスにわけて、徹底して1個のステップをレベルアップしていくことにしました。

新規開拓という課題があった時に、例えばホットペッパービューティーのセールスだとして、新しい美容室にぜひ掲載してくださいと伝えたい時に、まず顧客リストが必要ですよね。

何件のリストのパイがあるのか。じゃあリストが1万件揃いましたと、自分の割当は500件だとすると1日どれくらい接触できるのか。1日100件に電話できるとして何%の割合で話ができるのか、見込み客になったり、アポにつながったりするのかと。アポになったうち、何件が決まるんだと。その段階ではまだ弱くて、何件が最終的な金額入りの提案、社内で最終調整するよって話までいただいているか。

中間ポイントが何件で、さらに何件が成約して、何件がリピーターになっていくか。一個一個を突破する確率論の世界でしかないと思いました。一個一個を改善すればいい。私の場合は営業先がそこそこ大きい企業だったので、まず受付の人が出てくるんですね。そこで、今度はさらにブレイクダウンするんです。なんとか話ができる関係になったか、アポがとれるか、受付を突破できたかがKPIに。でも、多くの人が受付突破できないじゃないですか。私も受付突破できたらこんな話しようと思っていて頑張っていた。

だから、まずは受付を突破する確率をあげようと。受付を突破するにはどんな話がいいのかな。数をこなすことで話のストックを貯めていきました。リアルABテストのようなものです。例えば、受付を突破する時は取引先と勘違いされると突破しやすいから、声のトーンを馴れ馴れしくいこうとかっていうTipsが貯まっていくことですね。

一個一個積み重ねていくと、接触した100件のうち1件しかアポとれなかったのが、3件とれるようになったりと、確率が上がっていく。アポが入ると、アポから最終成果、最終提案の数字も上がるじゃないですか。そういった確率論の世界なんです。100件行って100件決まる人なんて絶対にいないです。

でも、確率論の世界だと思えば一個一個あげていける。どこが課題なのか徹底的に分析することで、ここさえ変えれば最終結果が出るとわかるので、テレアポとかそんな好きじゃない私でも営業のPDCAサイクルを回すプロセスを徹底できたというお話です。

例えば、3カ月後には月10件の新規開拓をするという定量的なゴールを決めたとしましょう、次のプロセスはゴールと現状のギャップの把握です。先月までは平均5件だったので、月2倍にしないといけないというギャップが把握できます。

続いて、2倍にするためには何をすればいいのかを考えます。課題が「プレゼン勝負になると勝てないんだよな」とか「スケジューリングが下手で1日に3件しかまわれないんだよな」とか「ヒアリング能力が低いんだよな」とか「早口なんだよな」とか色々と出て来るわけです。

課題は取捨選択して、優先度の高い3つを選ぶ

今日は、お題としていただいているのもあり、仕事の取捨選択の話に絡めてもお話していきます。課題レベルで取捨選択をします。課題がいっぱいあると、当然ながら全部に手を付けることはできません。まずは、結果としてインパクトはどれだけあるのか、時間はどれだけかかるのか、気持ちの気軽さも重要です。

優先度が低いものは切っちゃいましょう。課題は3つに絞りましょう。大きな課題3つに取り組めていれば、10個課題があって100の結果が出るとしても、1番優先度の高い3つが100点満点の70点を占める。残りの7個は3割でしかないんです。

優先度の高いものは大きな結果が出やすいんです。さらにそれをKPI化する、数字にする。解決する課題が「プレゼン勝負になると勝てない」だったら、プレゼンの勝率を30%から50%にする、とか。スケジューリングがヘタで1日に営業先を3件しかまわれないのなら、6件まわれるようにしましょうね、とか。

課題がないのに解決策は出てこないので、課題が先です。課題を考えた後に、解決策をそれぞれ出していく。解決策だって絞り込む。課題さえ正しければ、いっぱい出てくると思うんですけれども、優先度の低いものはどんどん切っていきます。この課題ー解決策レイヤーで取捨選択します。

取捨選択のポイントは、インパクト、時間、気軽さです。すごいインパクトあって時間もあまりかからないのに、あの人と仕事しなきゃいけないから凄く苦手…となると気軽に動けないので、気軽さが重要な指標になります。

私は証券の営業だったので、毎月の目標数字を達成するために新規開拓という目標をブレイクダウンをして、KPIを設定していた。四半期の振り返りベースでは、あらゆる分野の課題や伸ばしたい点をPDCAシートに書いていた。これくらい書ききると、ものすごく明確に次の四半期を走れるようになります。

私も最初からそこまでできたわけではなく、段々とマインドマップは細かくなっていきました。どんどんマインドマップが出てくるようになると、普通に仕事していても頭の中でこれとこれとこれが課題で、解決策はこれで、とワーッと出てくるようになります。

ここで、皆さんに質問です。現時点での大きな課題3つ言えますか。特に3カ月後の数字を達成する上で大きな課題を3つ挙げてください。仕事をする上での課題です。これをやると、本当に面白いくらいに1つ2つは出るけど、3つ目は出ない。すぐに出てくる人は目標が明確で走れています。

出てこない人は、全体像が見えていないんです。課題の因数分解ができていない。プロセスが見えていない。KPI/KGIのファクトが見えていないわけです。

ls_main05

エレベーターピッチと流れ星理論

ここで2つ理論を紹介したいと思います。1つはエレベーターピッチ。エレベーターピッチとは、アメリカのシリコンバレーとかで、エレベーターがあがっていく時に投資家にたまたま会えて、「お前何やってるんだ」と言われた後に降りるまでの30秒以内で一気に自分のことをピッチして、プレゼンに成功すると、投資家と次のチャンスがもらえるという話。パッと言われて魅力的な内容を明確に話せるレベルになっているかが重要なわけです。それだけ明確な人は勝手に成功するよと。

もう1つは流れ星理論。流れ星が落ちる間に願いを言うと叶うという理論を、論理的に噛み砕いてみます。流れ星が見えてから見えなくなるまでの間に自分の願いことが言えるくらい明確なら、その人がその願いごとをきっと叶えられますよねと。

大きな課題3つもそうですし、3カ月、6カ月、1年ベースでもいいので、チームや個人の課題をすぐに言える人が課題解決やPDCAまわせる人なんです。課題があるから前に進めるということなんです。

脳はPCのCPUに似ていると思うんです。脳の中で色んな明確なものが増えれば増えるほど、CPUを食う量が減っていく。ブラウザやアプリが沢山立ち上がっているとパソコンが凄く重くなるじゃないですか。でも、デフォルト機能なら、そこまで重くない。このプロセス自体をデフォルト化していきましょう。課題が明確化されていれば、もうブラウザを立ち上げる必要がないですよね。いちいちブラウザを立ち上げていると、色々ともやもやして思考回路が遅くなっていくので、既に明確化されていたら脳の思考回路使わなくていいですよね。それどころか普段過ごしているだけでいろいろな解決策や施策が浮かんでくるようにさえなる。

タスクをDoとToDoに分解する方法

次はDo、実行サイクルのところです。Planで5割離脱するなら、実行フェーズで3割が離脱します。その中の7割くらいの人は抽象的なままでアクションを抱えて、実行に移せないことが多いです。抽象的なままのアクションで終わっている。計画の段階で、課題をクリアするための解決案が見えていますか? 実行の段階ではそれを複数のアクションに分解して、アクションを具体的なタスクレベルに落とし込んで実行に移します。

アクションからタスクへの分解をなるべく迅速に行うことが大事です。タスクは具体的であればあるほど手を付けやすい。粒度が粗いままになっていると、日々の生活に追われていたり、乗り気じゃなかったりすると実行に移せません。だから、具体化しましょう。人は明確な基準が与えられない状況下では、気軽さと緊急さの2つの指標で行動を決めてしまいがちになります。

解決案をDoに変換して、DoをToDoに落とし込んで、ToDoの進捗確認をしながら実行に移す。なぜこんなに分解する必要があるのかを今から説明します。解決策とDoとToDoは全部違います。

解決案として出したものを行動レベルに落としたものがDoです。そして更にDoを分解したものがToDoです。分解する度に数は増えていきます。DoとToDoの2階層にしている理由はDoの段階で仕事を抱えっぱなしになるからです。よくある、ずっと放置されている、タスクリストにずっとある仕事はDoのまま置いてあるからです。

大きなステーキを食べるのに切ってないと食べにくいですよね。切らないと食べられないから置いてあるみたいな状態です。切ったら食べやすいですよね。同様に、分解していくとToDoにわけられ、ToDo化すると手がつけやすくなる。

実行フェーズで最初にやるのは、Planで触れたように、解決案を実現するためのアクションを考えること。このアクションがDo。「役員まで出世したい」という目標があるとして、課題洗い出しを経た後に「会社の数字に強くなる」という解決策が出てきたとして、これをDoにすると、「簿記の本を読む」みたいなことになる。

まだこれでも具体的じゃないので、ToDoに落とし込む。「今日中に駅前で簿記の本を3冊買う」とか、「簿記の本を一週間で読み切る」とか。特に手間の掛かりそうなDo、緊急度の低いDoは着手しにくくなる。なので、DoとToDoはわけて使いましょう。

KGI、KPI、KDIの説明

さらにKGI、KPI、KDIは違う概念です。最終ゴールがKGI、通過地点がKPI、それをクリアするための行動指標がKDI。KDIは私がつくった言葉です。なぜこの言葉を使ったかというと、Doを定量化すべくKDIを設定しています。Key DO Indicatorです。KPIは簡単にコントロールできない、結果まで時間がかることが多い。売上達成のようなKPIを設定しても、予想外の外的要因が潜んでいるかもしれないし、100%の行動が100%の結果をうむとは限らないし、タイムラグが生じるんです。

でもKDIは行動したか、していないか、です。今週10件電話をする。提案する、リストをつくる、10冊の本を読む、やるかやらないかベースの話です。自分がやるやらないかベースに落とすことで、経過を測れるようになる。目の前のKDIが満たされた状態で結果が出なかったのか、満たされなかったから結果出なかったのか、区別して話さないといけないですね。

行動量が足りなかったなら、モチベーション、仕事の仕方、生産性の問題になります。KDI達成しているのに結果が出なかったら、KPIからKDIへの分解する時の課題と解決策がズレているという話なんです。

両方を同じように判断して「結果が出てない」と思うのではなく、KDIがまず達成されているのかで判断しましょう。

DoとToDoだと、「同僚Aに協力をあおぐ」を分解すると、「今日中に打診する」「1週間以内に返信」というように分解していく。分解していくと扱いやすくなります。
チームの中で手をつけずに進まないタスクは、Doの粗い粒度のまま放置されていることが多い。実は分解すると小さく切れます。やりやすいものからやりたくなるので、タスクをこなしやすくなります。

タイムマネジメントで重要な3つの要素

次にタイムマネジメントの話。取捨選択の部分。時間がなければToDoが整理されていても実行に移せない。若い方やはじめてチームを率いる方はマルチタスクになりがち。パニックゾーンに入りやすい。そこではじめてタイムマネジメントの必要性を痛感します。

タイムマネジメントで重要な3つの要素があります。
1.捨てる、完全に捨てる
2.入れ替える
3.圧縮する。短くやるか、日頃のルーティンに差し込むか

圧縮することはこの中で最も大切です。例えば、ミーティングと何かの報告を一緒にするとか、ミーティングと部下のケアを一緒にするとか。

でも、今の時間の使い方を効率的にするために、圧縮すること真っ先に考えるけれど、それは最後のほうがいいんです。まずは捨てる、そして入れ替えるを考えて、最後に圧縮です。

さらにこの3つの前に、現状を把握するために、やっていることを全て書き出してみましょう。1週間のサイクルでまわっていることが多いと思うので、1日何やっているのか。何に何分、時間が使われているのか。全部書いていきます。

寝ている以外の時間を全部入れた結果、寝ている以外のトータルの時間でやるべきことはできるのか。やりたいことに対して、だいたい時間は足りてないんですよ。

やっていることを全てリストアップしたら、課題、解決策、Do、ToDoを出し、入れ替え、圧縮、簡単に捨てられるのかを考えます。

「緊急×重要マトリクス」を活用する

『7つの習慣』の「緊急×重要マトリクス」が取捨選択に活用できます。多くの人は重要、緊急の第一象限にほとんどの時間を割いています。非重要だけど緊急の領域にも時間を割いています。どれだけ緊急なことに追われ続けているか。このサイクルのどこにそのタスクはあたるのか、さっき書き上げたものを当てはめていきます。

新しく出てきた課題から、解決策やDoを今あるものとどう入れ替えるか考えていきます。緊急領域が減り、非緊急だけど重要なもの増やすと、仕事へのモチベーションがあがります。なぜなら、それは未来に対する準備なので。緊急のものに追われている感覚があると、緊急のほうにばかりに集中してしまいます。重要だけど非緊急のものって、少し先に対する準備じゃないですか。

3カ月後までの課題を考えるのって、非緊急だけど重要という領域の話です。そのペースでの大きな課題を3つ挙げられたら、ビジネスパーソンとして優秀だと思っています。上に立つ立場の人ほど、部下の方に未来を見せないといけないので、重要、非緊急領域の仕事が多くあるべき。部下は目の前の緊急なことを頑張っているけれど、少し先にはこんなことが待ち受けていると、希望とかワクワクする未来を見せてあげることにつながるんです。

大中小のPDCAを回す

Plan、Do、Check、Adjustとある中で、全てがPlanに戻ってくるわけではないです。そこを勘違いするとごっちゃになります。AdjustからDoにいってもらってもいいです。Planに戻るのは、ある程度DoやToDoをやりきったときです。

Planレベルで修正が必要な時、大きな課題が出てきた時にPlanまで戻ります。そのサイクル自体がもういいやと、目標や目的が変わったと。その時は新規のPDCAが走り出します。通常のPDCAの回り方だけじゃないことを理解してほしいです。

さらに、PDCAにも大中小があります。大PDCAが“10件の新規成約が取りたい“だったら、中PDCAは30件の見込み顧客を取らないといけないと。さらにその下には、1日100件の電話で話せる関係、アポ先がないといけない。大中小のそれぞれのPDCAが回り続けていると。まず最初は簡単なPDCAからでいいんですけど、プロセスでブレイクダウンしていく時にわかりやすくなるのかなと。

PDCAを回すことはRPGのレベル上げのようなもの、楽しくなると自信が出る

PDCAが生み出す意外な効用。散々考え抜いた結果、導かれたToDoをこなすことは非常に楽しいです。RPGでレベル上げをする時にすごく似ています。ToDoもレベルを上げるのも地味な作業かもしれませんが、行動の目的が明確なので迷いはないし、終わらせれば必ず前に進めるとわかっているので頑張れると。

仕事が楽しくないのは、かけた労力に対して見返りがないと思うからです。金銭的な見返りの話もあるけど、自己実現の感覚も大事です。PDCAを回しているとやること全てに意味があると思えるので、日々の充実感が増して自信を持てるようになります。人間が自信を失うのは壁にぶつかった時です。楽しくなって自信を持ち続ける、壁にぶつかった時に早期に解決し前進できるのがPDCAだと。

自信は重要です。本田圭佑選手は「信じることは僕にとって希望なんです」と言っている。NHKのプロフェッショナルで「信じられなくなった時に希望の光は見えなくなる。人は誰しもがうまくいかなくなった時にちょっと疑うと思うんです。その時にいかに自分を信じることができるか。信じることは僕にとって希望なんです」と。信じることは自信ですね。

PDCAを回すことは、螺旋階段で上に進むことに例えられる

最後に、螺旋階段の話をしたいと思います。日々全力でやっていると、螺旋階段をのぼっているような、同じところを繰り返しているような感覚に陥ることがあると思います。こんな単純作業の繰り返しでいいのかなと。若い時、私も迷ったことがあります。

KPI、KGI、KDIのそれぞれが目標、課題解決策、行動とちゃんと落とし込めていると、螺旋階段を上にあがれているんだなと実感できる。

前に進む自信がみなぎってくるという意味でも、PDCAを取り入れるのは重要なことだと思っています。わたし自身日々PDCAをまわし続けています。ZUUに国内外合わせて正社員で60人以上のメンバーがいますが、メンバー全員が明確に走れる状態、螺旋階段を1歩1歩のぼっていることを実感できる状態をつくろうとしています。そういうふうに一緒にやっているメンバーが自信を持ちながら、生き生きと進める状態を継続できたら良いなと思っています。ご清聴ありがとうございました。

PDCAを回す際に「目的」は何度も確認したほうがいい

司会:ここからは質疑応答です。先にアンケートを回収しているので、多かった質問を私のほうから質問します。1つ目、個人や一般的な企業でありがちなPDCAのダメな例と改善策は?

冨田:個人と組織、それぞれあると思うのですが、目的って何度も確認したほうがいいですね。気づくと目的が変わっていたことが起こりやすい。時にチームの時に起こりやすくて、引き継いだ時、引き継がれた前からあったPDCAや施策があって、定例・定型化されているけど、「なんでそもそもやっているんだっけ」という理由が引き継ぎの時にあまり伝わっていないケースがあります。

施策の意図が設定されていないと、意図の方向は変わっていってしまいます。そもそもなんでこれをやったのか、目的はPlanのサイクルの中の裏側にあるもの、毎週目的をチェックしなくてもいいけど、定期的に見直して、チームメンバーに共有しましょう。

異動があれば、新しく入ったメンバーには昔からあったPDCAの施策をなぜやっているのかと疑問に思って、そもそも回すべきなのかと考えてもらいましょう。そもそもの意図の共有が薄いと、改善サイクルまわすモチベーションがわかなくなるので。

あとチームメンバーのKPIだけではなく、KDIをみてあげる。この人は結果が出ないから仕事できないのかなと思いがちですが、結果が出にくい部署やチームは必ずあるんです。KDIまで分解されていると、行動できたかできていないかベースで判断できるので。

行動できていれば、このまま続いていったらKPI達成できるのではないか、と考えられる。そこもしっかり見ていくと理想的です。KDIをみると、個々のペースで仕事ができるようになります。

KDIが達成できていなければ、仕事の負荷が重くなっているとか、モチベーションが下がったとか、仕事の進め方に迷っているのかとかもわかるんです。KPIは結果が出るまで時間かかるけど、KDIはやったかやっていないかベースなので、一人ひとりの状態が見えてくる。皆でケアしたり、サポートしてあげたり、フォローしてあげやすくなりますね。

司会:ありがとうございました。リクルートは最初に引き継ぎされなかったり、共有の文化がないのが弱みだったりするので、習慣を大切にしていかねばと思いました。会場の皆さんからの質問を受けます。

PDCAを意識する最初のステップは、課題を考えること

質問者1:貴重なお話ありがとうございました。今私もメンバーを抱えていて、重要と非緊急のところを重視していきたいと思いました。このPDCAを意識すると伸びると思うのですが、まず意識するために努力できるポイントは?

冨田:導入の部分でよく出てくるんですけれど、課題の話から入るといいです。自分には見えていて、ある程度うまくやっていると思っていても、課題すら3つ言えないことは実は多いんです。

課題が見えていないと始まらないので、そこをサポートしてあげる。その後、課題を考えた後に解決策を考える。ToDo化していこうか、「施策としてあるけどできそう?」と話す。すると「これだったらできそうです」と言ってくれて、道がひらけたたり、やることが明確になったり。ほとんどのケースで、まず課題を3つ考えることが大切ですね。

最初は粗い粒度でもいいから、まずはPDCAを回してみる

質問者2:お話ありがとうございます。Planのほうでお聞きしたいことがあります。やることリスト、ゴールまで分解してやること決めていこうという話があったんですけれど、僕は細かく管理することが苦手で、そういうタイプの人間は最初どうやればいいでしょうか。

冨田:わたしも細かく管理するのが苦手で、最初は粒度が粗かったです。最初は粗くて全然良いです。最初は、「これ全然PDCAになってないじゃん」という粒度でも問題ないです。わたしの頭のなかで今は大中小まで回っているけれど、過去にはP、D、C、Aとかメモに書いてやっていたので、凄く粗かった。継続していくと段々と具体的になっていく。なのでまずは回してみることが重要です。最初は粒度が粗くてもいいので、その状態でスタートしてみましょう。

エンジニア職にとってのPDCAサイクルの回し方は、アジャイル開発やリーンスタートアップの手法に近い

質問者3:本日はお話ありがとうございます。私はエンジニア職なのですが、システム開発や構築になると半年や1年スパンの話が多くなるんです。その時のPDCAというのは、さすがに全体通して一回だとマズイですよね。どのタイミングで行うのがいいのでしょうか。

冨田:実は、今回の書籍、本当はメディアのグロースとかインターネットサービスの話をもっと入れたかったのですが、出版社さんから、わかりやすいから営業の話を増やしてくださいと削られました。エンジニアの友人や、会社にもエンジニアのメンバーが多いので入れたかったんです。それに、PDCAサイクルは、エンジニアのアジャイル開発とか、IT業界で有名なリーンスタートアップの考え方に近いんです。

仮説をつくって走らせて改善していこうぜと。システム開発のほうが考え方は近くて、半年後の開発に対して、第1,2,3とスプリントまわしていると思います。スプリントごとに管理・改善されていると思うので、そのスプリントごとのサイクルをPDCAだと思っていただければいいかなと。

KDIとToDoの違い

質問者4:KDIとToDoの違いを今一度教えてください。ToDoをマネジメントしていく上位概念がKDIですか?

冨田:Doを数値化したものがKDIです。課題のところをやるレベルに数値化したのがKPI、DoからKDIへ落とします。DoとToDoは縦の関係です。Doを細かくしたものがToDoです。

どんどんレベルアップしたいと思った時に「生産性のレベルをあげる」はDo、具体的にこの本をいつまでに読むはToDo。やるかやらないかベースまで落とし込むことがToDoですね。

PDCAを回しはじめた時にモチベを高めるには、KDIを重視し、達成していくこと

質問者5:PDCAサイクルを回せる状態になるまで、かなりタスクを切って、やることを決めてやっていくと思います。今やって明日成果が出るものが多いわけではない中で、PDCAを回して自己実現が実感できるまでモチベーションをどう保っていけばいいのか。

冨田:まず、ToDoに落とすまでにどれだけプロセスがあるんだという話ですよね。Planで8個あってDoで5個あると、かなりブレイクダウンが最初に必要です。

でも、KDIを重視せずになんとなくやっていると、結果でないですよ。KDIができるかどうかだけ重要視していると、面白いくらいにKPIが達成できるようになる。KPIが達成できないのはKDIが達成できていないからです。KDIの達成を考え続けると、KPIが達成されていくので。ここまでやりきったという感覚が、継続する気持ちになれる方法かなと。

チームでKDIを設定する時はプロセスにチームメンバーを巻き込む

質問6:KDIについての質問です。組織内で動く時にKDIはひとつで統一したほうがいいのでしょうか。自分以外の人がたてたKDIには納得しにくいと思うので、自分なりのものをつくればいいのでしょうか。

冨田:KDIが生まれるまでのプロセスをチームメンバーと一緒にやっていただきたいです。こういうプロセスでいくと課題解決できそう、と落とし込まれるとKDIになって、じゃあ走ろうと思えるので。プロセスのところは時間がもったないと思ってはいけなくて、きちんと取り組む。それをやらないほうが、その後現場の方が迷っちゃうので時間がもったいないです。途中まで走っちゃって、後からKDIこれでいいのかなと疑問に思うと辛いですよね。時間かかるかもしれないけれど、そのプロセスを一緒に見せてしまえば、このKDIなら達成できると思えるはずです。

目標を達成する際には、7合目とか8合目でだいたいスローダウンし始めるんですよ。そこからが険しいんです。なんとなくまだつかないのかなと、思うようになる。その時に迷わないためにプロセスごと明確にした上でのKDIにしておくのが重要かなと考えています。

PDCAに失敗という概念はない

ls_main06

質問7:ご自身の経験の中で過去最大に失敗したPDCAを教えてください。どうリカバーしたのでしょうか。

冨田:PDCAに失敗って概念はないと思っています。そもそも仮説ベースでしかない話なので、PlanもDoもToDoもこれやったら最短距離だろうという仮説でしかないんです。

仮説でしかない概念なので、失敗と思ったことはあんまりないですね。良い解決策自体はもっといっぱいあったのになとか、課題はこっちだったというのはあります。でも、それは仮説が違った、もしくは精度が低かっただけ。あくまでも次のPDCA回す時にその方向に向かえばいいので。それよりもこのサイクルをはやく回すほうが重要です。

質問8:CであるCheck機能が凄く重要で、CheckをしてPlanやDoを見直す、KDIを見直していくことでしょうか?

冨田:Planは仮説でしかないので、CheckやAdjustのタイミングで誤りに気づいても、仮説がちょっと違ったから修正しないといけないと思うことでしかない。仮説であると捉えないと、間違っちゃいけないと思ってしまうので腰が重くなりがちです。