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Life Shift

2017.02.16

企業の「サイロ化」から脱却せよ。今、大企業間の若手社員が繋がるワケとは

大企業に勤める20代〜30代の若手社員を中心とした有志団体「One JAPAN」がこの9月に発足。発起人の一人である濱松誠氏は、所属するパナソニック内で2012年に有志団体「One Panasonic」を立ち上げるなど、組織や部門がそれぞれ孤立する「サイロ化」からの脱却を図ってきた。「いま大企業に必要なのはコレクティブ・インパクト(組織を超えた課題解決)」と語る濱松氏は、One JAPANを通してどんなメッセージを社会に訴えかけていくのか。

20代、パナソニック社内で立ち上げた団体から始まった

—パナソニック内で「One Panasonic」を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか

2011年にパナソニックがパナソニック電工と三洋電機を子会社化したことが事の始まりです。もともと血筋が同じなんだから協力し合ってやっていこうという思いで、当時29歳で若手なりに何かできるんじゃないかと「One Panasonic」を立ち上げました。初回の会合に当時の社長(大坪文雄氏)を呼ぶことができて、当初から団体がもつ力を感じていました。

活動を始めてから今年の3月で5年が経ちますが、これまでにのべ4,000人以上の方に参加していただきました。活動する中で別の企業でも同じような団体を立ち上げてやっている人たちがいるという話を聞いたり、嬉しいことにOne Panasonicの話を聞いて「自分たちも社内につくりたいです」という声があったんです。大企業としてどこも同じような悩みを抱えているのであれば、ノウハウを共有して、一緒に解決していけばいいんじゃないかと思い、富士ゼロックスの有志団体「秘密結社わるだ組」を主催する大川氏と、NTTグループの有志団体「O-Den(おでん)」を主催する山本氏を誘い、3人でOne JAPANを立ち上げることにしました。

―過去、似たような団体が立ち上がっては消えていくなかで、One JAPANがこれまでと違うところはどこにあるのでしょうか。

大きく3つあります。一つ目はスマホの登場とSNSの普及。情報伝達のスピードが素早く、コンタクトが気軽に行えるようになり「ゆるく繋がり続けること」が容易になったことです。二つ目はベンチャーの台頭。小資本・少人数のベンチャーが社会へ一定のインパクトを与えるようになった今の時代、対比するように大企業の強みはどこにあるのか、果たすべき役割は何なのか問われるようになってきたことです。

三つ目は、原則的に大企業に勤める20代〜30代の有志団体・チームに絞ったコミュニティであることです。大企業の20代~30代に固定したのは、大企業に勤める人間だからこそ持つジレンマや悩み、立ちはだかる壁やその課題解決策を共有しやすく、熱量も高い。そして個人参加でなくチーム参加にすることで、火が消えにくく継続しやすい。せっかく大企業には優秀な人材や技術が集まり若さゆえの行動力もあるはずなんだから、企業間で協力し合えば今までできなかったイノベーションを起こせるのではないのかと考えました。

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—One JAPANに参加するには1社5名以上が条件とされているようですが、その意図はどういったものでしょうか

先ほども少し触れましたが、これはOne JAPANの大きなユニークネスのひとつで、参加を個人ではなく「団体」・「チーム」単位にしたいからです。社内を変えるには、一人では現実的に難しい。やはり共に進む志の高い仲間が必要です。また、大企業には有形無形の資産が豊富にあります。個人よりも団体・チームのほうがより多くのリソースを活用できます。1社5名以上というのはあくまでも現時点での条件ですが、今後は変えていくかもしれません。

—これまでに3回会合を開かれていますが、現場の温度感はどのようなものでしょうか。また今年の1月に新幹事として3名が加わりましたが、どのような意図があるのでしょうか

まずは大企業の中で課題や強い思いをもつ人たちがこれだけ集まり、横でつながることで、今までにない非常に大きな熱量が生まれていることを実感しています。さらに団体として複眼的思考を持つべく、3人を新たに幹事として迎えることにしました。マッキャン・ワールドグループホールディングスで有志団体McCANN MILLENNIALSを代表する松坂氏、日本取引所グループ有志団体「兜ナイト」を主宰する須藤氏、NHK「ジセダイ勉強会」を主宰する神原氏を迎え、「グローバル」、「ダイバーシティ」、「ソーシャルインパクト」、「クリエイティブ」の分野の強化を図っていきます。共同発起人3人と彼ら、それから他の団体の代表者を中心に、現時点で「イノベーション」「ワークスタイル」「メディア」という切り口で約10のプロジェクトが走っています。

-企業内有志団体のなかには、ともすると社内での自身の立場が危うく他と繋がることで居場所を確保している、というケースがあったりしますが、ここではあくまで本業としても成果を残されて、さらに可能性の追求としてのOne JAPANへの参加という認識でよろしいでしょうか。

One JAPANは各社の組織の中だけでは生み出せない新たな価値を生み出す団体です。そのための有志の活動としています。
組織の中で「知の深化」を進めていく一方で、One JAPANでは「知の探索」により広い知識や刺激を得たメンバーが、新たなモチベーションやアイデアをもって本業にも相乗効果をもたらすことを目指していますし、実際にそのような効果を感じているという声を聞くようになりました。先ほどの新幹事の3人や、日本郵便の福井氏、三越伊勢丹の額田氏などは本業の成果がメディアでも取り上げられています。他にも「会社の業務」という文脈から一歩進み、会社に新しい取り組みを積極的に提案する挑戦者が非常に多いと感じています。たとえば、日本の大企業は「失敗できない風土」が問題視されていますが、One JAPANが新しいアイデアを持ち寄り、「失敗できる場」となり形となったものを企業に持ち帰り、本業として進めていくということも考えています。

—発足しておよそ4カ月が経ちますが周りの反応はいかがでしょう

メディアに取り上げていただき多くの反響がありました。その内容は「こういうの待ってた! 応援してるよ」とか「若い人たちの動き、期待しています」という共感の声もあれば、「何かにしがみつきたいだけでしょ」とか「ガス抜きでしょ」と揶揄されることもありますが、どの意見も真摯に受け止めています。ようやく40社300名という仲間が集まり、コミュニティのベースができました。先ほど申し上げた通り、現在、約10のプロジェクトを進めています。その中のいくつかは、4月ごろに発表できるものもあると思うので、楽しみにしていてください。

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オープンイノベーションが日本を変える未来

—日本はしきたりや慣習を大切にする文化で、少し前までは会社の看板を背負って活動することなど難しい時代だったと思います。そのあたりは世界中で進むオープンイノベーションの精神が影響していると思われますか

そうですね。少し前の時代では、同じことをしていても実現できなかったでしょう。大切にすべき文化もありますが、大きなイノベーションを果たすためには世界の時流に反するわけにもいかないのです。オープンイノベーションによってリスクがないとは言えません。ですがそのリスクを考えて何も動けないよりも、まずは性善説で動き出してみる。そのあと問題が出てくれば一つずつ対応していけばいい。そのくらいの勢いがないと社会は変わりません。

その点において企業側が理解を示してくれる出来事がありました。ある企画で参加する団体の各社のロゴが必要になったんですが、会社のロゴというのは用途が厳格に決まっていて、これまで社外活動で使用を認めることはほとんど例がありませんでした。ですが各団体が交渉にあたったところ12社から掲載の許可を取ってきれくれました。そうやって企業側の考え方も徐々にシフトしつつありますし、そのスピードはこれから加速的になっていくでしょう。こんなことは小さなことかもしれません。でもこの一歩が大事なのです。その積み重ねでしか世の中は変わりませんから。

—今後、団体のなかには所属していた会社を離れてOne JAPANとして、もしくは独立して起業という可能性もあると思いますがいかがでしょう

今は、One JAPANとしての独立・起業は考えていません。その企業に属しながら、それにより得られる価値を最大限に生かしながら、やりたいことを実現する。二足のわらじを履いてどこまで進めるかはわかりませんが、可能な限り進みたいと思います。

また、One JAPANの参加者でいうと、独立して起業をする可能性は正直あると思います。私たちは、起業や転職をむやみに勧めたり止めたりはしません。最終的には本人の自由であり、個人の意思です。どのような形であれ、一歩踏み出す個人が多く生まれることが大切だと思います。本人が望むなら、大企業もベンチャーも起業も経験してみたらいいと思います。仮に起業をしたなら、One JAPANアルムナイ(卒業生)としてどんどんコラボすれば良い。選択肢はたくさんあるということを見せたいですね。

—濱松さんにとってよい社会とは何でしょう

一歩を踏み出し、多くの人が挑戦できる社会。そしてその人たちが報われる社会です。諦める人を減らして、諦めない人を増やす。「言ってもムダ」症候群からの脱却ですね(笑)。大企業に勤めているからこそできることというのは実はたくさんありまますし、今の日本経済を築き上げてきた大企業の底力は絶大だと思っています。もちろん、大企業だけでよい社会を実現できるものではありません。ベンチャー、ソーシャルセクター、アカデミア、行政など色々なところと連携し、それをコレクティブ・インパクトでさらに加速させ、これまでになかった社会を作り出せることを信じています。


濱松 誠

1982年京都生まれ。パナソニック株式会社所属(パス株式会社出向中)。One JAPAN / One Panasonic発起人・代表。大学を卒業後、2006年パナソニックに入社。海外コンシューマー営業、インド事業推進に従事した後、2012年に本社人事へ異動。パナソニックグループの採用戦略や人材開発領域を担当する傍ら、2012年、人材・組織活性化をねらいとした有志の会「One Panasonic」を立ち上げる。2016年、大企業の同世代で同じ課題意識を持つ有志を集め「One JAPAN」を設立、代表に就任。日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」に選出。


TEXT & EDITING BY KEISUKE TAJIRI