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Life Shift

2017.02.09

“つながり”の価値を創造する会社に生まれた新しい職業、新しい働き方

この数年、SNSや検索システムの進化に伴い、“つながり”という言葉が注目を集めてきた。クラウド型の名刺管理サービス「Sansan」と「Eight」を展開するSansan株式会社には、まさに“つながり”を意味する“コネクタ”という職業を担うメンバーがいるという。この職業はどのような役割を果たすものなのか。また、“つながり”はビジネスにどのような価値をもたらし、どのような気づきを与えてくれるのか。同社で“コネクタ”として働く日比谷尚武氏に話を聞いた。

大切なのは、名刺交換の先にある“つながり”の可能性

名刺交換は、ビジネスにおける重要な役割を持っている。キャリアを重ねるにつれ、それは膨大な量になってくる。整理・管理するのは手間と時間は掛かるし、いざコンタクトを取ろうとした時に名刺が見つからず探すのに苦労した、という苦い記憶を持つ人も多いだろう。紙の名刺は“出会い”の儀式的装備としては有効だが、生まれた“つながり”を常にONの状態にしておく機能は希薄だ。その問題を解消すべくローンチされたのが、Sansan株式会社のサービス「Sansan」と「Eight」だ。

「現在弊社では、法人向けのサービスとして『Sansan』、個人向けとして『Eight』の2つを展開しています。それぞれコンセプトや機能は異なりますが、ともに名刺をデータベース化することで、交換した情報を利活用しやすくし、ビジネスマンの働き方を革新することを目的としています」

使い方は至って簡単。名刺をモバイルのカメラやスキャナーで取り込み、その会社名、役職、氏名などの文字情報を抽出。その情報をデジタル化することで、整理管理でき、また検索効率は格段にアップする。さらに、Eightではユーザー情報をクラウド上でネットワーク化することも可能だ。ユーザーは自分が開示したい情報のみ開示できるよう制限を設け、他のユーザーとコミュニケーションを取ることができる。Eight上でつながったユーザーに対して、自身の名刺の画像データも公開できる。単なる文字化された情報ではなく、名刺というモノの独自性を保ち、かつビジネスにおける「私」というアイデンティティを担保しているのも特徴だ。

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「“紙という媒体は非効率だ”とか、“名刺はデジタル化されるべきだ”ということが『Sansan』『Eight』を開発した動機ではありません。名刺というコミュニケーションツールがもつ可能性を広げようということです。つまり“出会い”の証である名刺というものを、単にデータベース化して満足するのではなく、それをどうやって活用すると働き方が変わっていくか。名刺交換で得た“弱いつながり”をどう太くできるかを、ポイントにしています」

“弱いつながり”を太くするサービス

この数年、“弱いつながり”という言葉をよく耳にするようになった。これは、アメリカの社会学者マーク・グラノヴェッターが唱えた“弱い紐帯の強さ(The Strength of Weak Ties)”に起因するもので、グラノヴェッターは、家族や親友のような“強いつながり”に対し、例えばパーティで数回話したことがあるような、そこまで親交が深くない人との関係を“弱いつながり”と表現している。そして、労働者へのインタビュー調査などを行いながら、実は後者の“弱いつながり”にこそ、有益な機会を得る可能性があることを、分析し説いた。

「名刺交換をした相手は、その時点においては、あまり今後の仕事に発展しない人かもしれない。するとそれは“弱いつながり”ですよね。しかし、ゆくゆくは有益な情報を与えてくれたり、仕事を依頼してくれたりする関係になる可能性もある。それは昔から変わらないことでしょう。ただし、かつてはその“弱いつながり”を活かそうとすると、定期的にパーティに足を運んだり、手帳などにその人に関してメモ書きをとったり、名刺ファイルに整理・分類して見返すなどの苦労がありました。それがSNSが発達したことで、スピーディかつ手間なくできるようになったんです」

特に現在は、企業における人のポジションは流動的だ。そんな時、「Eight」に搭載された職場や肩書きの変更を知らせてくれる機能は役に立つ。「この人は自分と関係のある重要なポジションに就いた」「その会社に転職したのなら、今後取引の可能性があるな」などの情報は、“つながり”を太くするきっかけになる。また、日経電子版と連携すれば、名刺交換した相手の会社がニュースで取り上げられると、その朝、自動的にお知らせが届くという機能もある。

「講演会やイベントを告知することもできるし、相談も可能です。実例を挙げれば、“今度海外展開するんだけど、シンガポールで事業したことのある人はいませんか?”といった相談事を、近況を報告し合う『Eight』アプリ内のフィードに書き込んだことでうまくマッチングしたケースがあります」

その人がシンガポールで事業していたことは、現在の名刺だけでは知り得なかった情報かもしれない。名刺に書かれた情報がクラウド上で共有されることで、その名刺の背後に隠されている“サプライズ”は起こりやすくなる。

「弊社のミッションは、“ビジネスの出会いを資産に換え、働き方を革新する”こと。特に、“働き方を革新する”ということに重きを置いています。名刺をデータベース化したその先で何ができるか、その先で起こることの価値を提案することが大切。AIやビッグデータの活用も、今後のサービスのカギになってくると思います」

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“つながり”を職業にして働く、ということ。

ふと、日比谷氏の名刺に目をやると、肩書きに「コネクタ」と書かれている。“つながり”という意味だ。この耳馴れない職種は、どのような役割を果たすものなのか。

「社外の方々と広く関係を築きながら、一方で社内の課題やテーマをウォッチして、関連のありそうなタイミングや内容に応じて両者を結びつけるのがミッションです。そもそもSansanでは、マーケティングや広報機能の立ち上げに関わっていました。その中で、例えば、メディアにリリースを送ったり情報発信するだけでない、社外との“つながり”の必要性を感じたのです。パブリックリレーションズの原型だと思いますが、それを人を介して行うことに価値がある。そんなことを弊社の代表と話していた流れで、実験的にそれを専業としてやってみよう、と。名前に関しては、その雑談時に“コネクタ”という言葉が自然に口から出てきたから。それをそのまま職種名にしただけです(笑)」

Sansan株式会社の中の、「Sansan」「Eight」の価値を体現する存在として活動しているということだ。そんな日比谷氏に、“つながり”を最大限に活用する方法を聞いてみた。

「ビジネスネットワークがもたらす価値として、“サプライズ”や“アイデア”が外からもたらされることは多々あると思います。ただ、だからといって、やたらめったら人と会うことは、私はしません。というのも、“つながり”の先に何がもたらされるかも重要ですから。そのために、自分や組織のもつ課題だったり、相手に提供できることを意識しておくようにしています。同様に、相手の課題や自分たちに何を提供してもらえるのかを知るよう努めます。その上で、マッチングがあるかどうかを見極めていく。お互いの課題と提供できることの交換が、“つながり”を強化し、価値を生み出すと思いますね」

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新しいテクノロジーが発明されて新しいビジネスが生まれれば、仕事の内容やフィ―ルド、そのあり方も新しくなる。テクノロジーを発明するように、職業自体を発明する。それは、ビジネスという営みに対する能動的な行為であり、多様化する働き方や働き方を革新することのひとつの表れなのかもしれない。

「外部環境が変われば、当然、そこでの活動の仕方も価値観も、組織の中での成果の出し方も変わってくると思います。今まさに“コネクタ”の役割も移行期にあるのではないでしょうか。プロの営業マンが時間と労力をかけて人と人、モノの“つながり”を作っている一方で、チャットやSNSなどを使って簡単にコミュニケーションし、それを可視化することが出来るようになった。特に今の若い世代は、当たり前のように“つながり”を活かしたり、日常的に情報に対しタグ付けしたりします。“つながり”を促すことを専門でやらなくても、誰もが自然に無意識にそれをやる時代が来るでしょう」

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日比谷 尚武

Sansan株式会社 コネクタ
慶應義塾大学在学中から社内ベンチャー企業で活動し、卒業後は大手SIに入社。2003年、株式会社KBMJに入社、取締役に就任。2009年、Sansan株式会社にほぼ創業期から参画し、マーケティングおよび広報機能の立ち上げに従事。現在は、「コネクタ」「エバンジェリスト」として社外への情報発信を務めている。