Life Shift

2016.12.14

『Life Shift』をリニューアルします

これまでを振り返ると

『Life Shift』がスタートして1年が経った。読者や取材に応じご出演いただいたイノベーターの皆さまのおかげもあって、曲がりなりにもメディアとして今日まで続けられてきている。そして今年7月には、『Life Shift』として初のイベントも実施することができ、読者の皆さまにも会えた。本当に、このメディアを通じて多くの出会いがあったといえる。「テクノロジーがぼくらの“日常”を変える」が『Life Shift』のタグラインであるが、立ち上げ当初の想いをここでもう一度振り返ってみたい。

「めまぐるしいスピードで変化し続けていくITの世界、これからもさまざまなイノベーションが起こっていくはずだ。しかし、同じ業界に身をおくエンジニアであったとしても全員がその速度に追いついているかというと、必ずしもそうではないはずだ。今起きていることは理解できていても、それが近い未来に花咲く種であることに気づけていなかったりする。技術そのものの進化には敏感でも、それが生活にどう影響するかというところまではなかなか想像が及ばないといったようなことだ。わたしたちはそういった世界中にちりばめられた種を拾い集め、エンジニアをはじめとしたIT感度の高い人たちに届けていく方舟でありたい。そして、このメディアをきっかけに新たなイノベーションが起こり、日常が変わっていく――そんな未来を想像しながら、このコンセプトに想いを込めた」(『WIRED』編集部に学ぶ「オウンドメディア」のつくりかたVol.2より)

自分たちが思い描いていた「未来の兆し」を伝え、新たなイノベーションをエンジニアや技術者と暮らしや生活者を結びつけるきっかけになることを目指して1年運営してきてた。そこでわかったことと会社や社会の変化を踏まえて、いま打ち出すメッセージを考えたときに、扱うテーマの輪郭をよりはっきりさせるに至った。そのテーマは、「テクノロジー×働き方」だ。

ls_main01

「働き方改革」の意味を考える

今、リクルートライフスタイルは、社内で「働き方改革」を始めている。その改革とは何か? 自分にとってより良い働き方、より良い人生を実現するためには、ビジネスや人生の観点において自分をモチベートさせているものが何であるかを理解することが重要だ。仮にモチベートさせている何かを「Happiness」とするならば、OutputとInputで構成される仕事においての生産性は、「Happiness」を掛け合わせることで高まるに違いない。また、それは当然ながら一人ひとり違うので「考える」ことが必要である。今回の「働き方改革」では、自分にとっての「Happiness」を考え、それに合わせた働き方をリクルートライフスタイルはサポートしていくということを指しているのだ。

『Life Shift』でも取り上げているように、テクノロジーがどんどん発展してくことで、仕事や働き方も多様化してきた。また、一方で、年金問題や人が長寿になっているというような社会的事象をふまえても、これまでのように一つの会社に長く務め、65歳定年後は安定の年金生活という考え方も確実に変わってきているのではないだろうか。そうすると、人は会社に属しながらも、個人として生きていく必要があり、何が必要かを考え、それを自分で決めていかなければいけない。そして、同時に会社は、社員に対して何を提供すべきか、つまり社員にとっての良きプラットフォームにならなければいけない。それが実現することで、生産性の高い仕事をすることができ、今後の社会をより良いものにしていくような、継続性のある形でイノベーティブな組織であり続けることができるはずである。

それは、単に「うちの会社は働きやすいですよ」ということではない。このメッセージを『Life Shift』として、どう発信していくか。ここである一冊の本が、これからの『Life Shift』の方向性をある種決めていくヒントとなりそうだと感じた。

ls_main02

来る100歳時代に向けて

誰もが100年生きうる時代をどう生き抜くか。
働き方、学び方、結婚、子育て、人生のすべてが変わる。
目前に迫る長寿社会を楽しむバイブル。
みんなが足並みをそろえて教育、勤労、引退という
3つのステージを生きた時代は終わった。
100歳時代の戦略的人生設計書

これは、経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりリンダ・グラットン氏の新著「LIFE SHIFT」のコピーである。新しい働き方を説いたベストセラー「ワーク・シフト」の著者でもある彼女の新刊は、まさに今、我々が取り組むべきテーマを扱っており、偶然にもわたしたちのメディアのタイトルと同じなのはさすがに驚いた。これから生きていく上での多くの指南が書かれているが、我々のメディア『Life Shift』をリニューアルする上で、何やら方向性のヒントが隠れていそうだ。この本を受けて、メディア運営に協力してもらっている『WIRED』日本版の編集長・若林氏も以下のように話している。

「前半50年と後半50年ということで、実はまったく違う人生を想定しなければいけない。リンダ・グラットンの話は悪夢のようなことですよ。でも、現実的には絶対そういう世の中になる。そのためには、やっぱりスキルが必要になってくるじゃないですか。それとやっぱりネットワーク。人とのコネクションができてくると、フリーになって独立しても、ちゃんと仕事が入ってくるチャネルが作れる。大事なのは、そういうことですよね」

ls_main03

メディアの機能を何とするか

前述のように今回のリニューアルに関しても、『WIRED』日本版の編集部とディスカッションを重ねた。『Life Shift』というメディア名はそのままに、コンセプトとタグライン、それに伴うコンテンツの方向性を決めなければいけない。リクルートライフスタイルが発信したいメッセージやこれまでの流れをふまえて、コンセプトというかメディアに持たせる機能はある程度見えてきていた。

1.Happinessは自分で見つけ、マネジメントしなければならない。
2.そのためには必要なスキル、テクノロジーがある。それは何か?
3.会社は必要なものを提供するプラットフォーム

今回の働き方ということに関係してくるが、いま改めて、仕事において「イノベーション」という言葉を耳にする機会が増えてきている。企業は、こぞって「イノベーション」を声高に謳っている。しかし、イノベーションを起こすには、まず何か自分の人生をイノベートしなければ始まらないのではないか。それが、会社や世の中の仕組みを変えるようなイノベーションを生む。総じて、やはり個人が「考える」ということが重要になってくると言える。ディスカッションのなかでの、若林氏の発言を引用したい。

「そんなに働き方の話じゃなくていいと思う。結局、生き方の多様性の話と、それを実現するためのスキルが何なのっていうことだろうなという気はするけどね。それが本来のある種の命題であり、自分で自分の生活を死ぬまで作らなければいけない。働き方といううちは、そとに働き方がある感じ。こういう方法論があるというか。そういうことじゃないと思います。生きていくための新しいマインドセットを創っていくみたいなことなんだろうなと思うけど。それが働き方にフォーカスされるというか。それは、遊び方でもいいわけじゃないですか」

ls_main04

新たなタグラインを考える

タグラインは、メディアにとって顔となり、自分たちが何者であるかを伝えるのでやはり重要だ。今回は、『Life Shift』編集部と『WIRED』日本版編集部それぞれ全員が、自分の考えてきたタグラインのアイデアを付箋に貼っていった。やはり、議論が過熱する。

「何が語られているメディアなのかというのをタグラインを見た時に一発でわかったほうが読み手としては安心するのかなという気がしました。イノベーションということをあまり使わなかったのは、その言葉自体がわりと広い、何にでも起こりうるものなので、それよりも働くことを意識しました」
「自分は逆に、イノベーションといった時の対象が社会ではなく、まず自分にある気がしていてそれがなされるときに、ある種、社会のイノベーションが創り出される。だから、自分、イノベーションというあたりで、自分事である目線はあったほうがいいと思うんだよね」
「個人というよりかは働くという言葉を入れるかどうかすごく迷いました。働くを使うんだったら、仕事に置き換えるか、未来を創るみたいな表現に作り替えていくか」
「色々とあがっているけど言葉としては『仕事・働き方・わたし・自分・日常・イノベーション・テクノロジー』みたいな話があるわけじゃない。基本的には、働く・生きる・創造するみたいな感じかな。これからの時代、働き方も自分もイノベーションしなければいけないし、会社がイノベーションを起こそうと思ったら、仕事自体もまずイノベーションしなければいけないよね。おそらくそれが仕事の在り方を変える。今回はそういうような自己循環をする話だから。直線的にすると、わたしがいて、会社と仕事があって、その先にイノベーションがある」
「『わたし・はたらく・イノベーション』っていうのはどうですか?」
「それ、結構いいよね。あと、冗談で言っていた『マイイノベーション』って実は良くて。例えば『スティーブ・ジョブスのマイイノベーションって何ですか?』と言ったら、要するにiPodかもしれないけど、自分なりのブレイクスルーみたいな話も含まれるじゃない」
「人生と仕事がより密着した感じは出ますよね」
「未来のあなたを作る……。人生をアップデートする……。ライフっていう言葉は使った方がいいよね。わたしのライフイノベーション……」

こうした議論を経て、新しいタグラインは決まった。

未来の「わたし」をつくるライフイノベーション・メディア 『Life Shift』

ls_main05

企画を編んでいく

こうしてリニューアルに必要なことは決まった。

*タイトル / タグライン
・未来の「わたし」をつくるライフイノベーション・メディア 『Life Shift』

*コンセプト
・Happinessは自分で見つけ、マネジメントしなければならない。
・そのためには必要なスキル、テクノロジーがある。それは何か?
・会社は必要なものを提供するプラットフォーム

あとは、それに伴う企画を考え、記事を作り、発信していく。果たしてどういった記事がこのメディアにふさわしいのか。『WIRED』日本版の副編集長である年吉氏から企画の考え方として、面白い例があがった。

年吉「あくまでテクノロジーによる仕事の仕方を扱うということは、記事の方向性として、例えばですけど、ある人が突然石を売ろうと思い、石を売ったことで幸せになったとする。それでお金を稼げたけどテクノロジーが絡んでいないから企画としてやらない、ということですよね。そのときに、Eコマースで売ったことであれば企画として成立する。石を売れるようになったのは、インターネットの時代だからみたいな」
若林「いや、大事なのは何から石売りになったかということだと思う。300人しかいない村の皆が石を売ることに夢中になったのであれば、それはそれで面白いかもしれないし、その買い手が世界中の大金持ちで編成される、というのであれば、十分にイノベ―ティブなことだと思う。マッキンゼーから石売りになった話とか聞いてみたい。要するに、それをモチベートさせたのは何かということ。ビジネスでも人生の上でもその観点はクロスしている」
三宅「年吉さん、石とECをかけましたね」笑

ともあれ、未来の「わたし」をつくるイノベーションの種をたくさん伝えていきたいと思う。新たにスタートする『Life Shift』をお楽しみに。


PHOTO BY SHUNSUKE MIZUKAMI
TEXT BY SHUNYA HORII