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Life Shift

2016.10.24

10年後には一緒に働くことになるかも!? プログラムを学ぶ小学生、彼らが大人になったら…

2020年度からの「小学校におけるプログラミング教育必修化」が検討されている。英語に次いでプログラミングも小学生から、という時代の到来だ。教育熱心な親の間では、子どもの将来に役立つ習い事として、英語とプログラミングがセットで語られることも珍しくない。らしいが…、果たして本当に子どもがプログラミングを習得できるのか。さらにそれはPCに疎い大人でも可能なのか!? プログラミングを学ぶ子どもたちの様子、そんな子どもたちと関わる親御さん、教室スタッフの話から今の小学生のリアルが見えた。


親が子どもに「やらせる」のではなく、子どもが「やりたい」習い事

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訪れたのはサイバーエージェントグループのCA Tech kidsが主催する、小学生のためのプログラミング入門ワークショップ「Tech Kids CAMP Summer 2016」(以下、テックキッズキャンプ)。小学3~6年生が参加するキャンプの最終日(3日目)だ。

早速、子どもを連れて教室にやってきた親御さんに、テックキッズキャンプに参加した理由を聞いた。小学4年生の息子・丞(すすむ)くんのお母さん・聡子さんによると、丞くんがプログラミングに興味を持ったきっかけは、中学1年生のお兄ちゃんが、今年のLife is Tech! キャンプに参加したことだそう。丞くん自身は、このキャンプで初めてプログラミングを体験する。

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「お兄ちゃんがLife is Tech! キャンプに参加して、それを見ていた弟が、『お兄ちゃんが楽しそうだったから、僕もやってみたい』と言い出して。もともと兄弟ともにゲームが大好きで、親としては興味があるなら、ただ受身でゲームをやり続けるより、自発的に作る側に回る方がいいと思い参加させることにしました。今後はどんな仕事にも必要なスキルだと思うし、たとえソフトウエアが変わっても、プログラミングの基本的な考え方は変わらないので、興味のあるうちに学んでおいて損はないと思っています」

今、学校で大ブームというモノ作りゲーム「Minecraft(以下、マインクラフト)」に、昨年の夏にハマり、本格的にプログラミングを学ぶためテックキッズのスクールに週1回通っている小学3年生の峻(しゅん)くん。「夏のキャンプも参加したい」という峻くんの熱意に押されて連れてきたと話すのは母・深雪さん。

「息子は休日になると1日中パソコンの前に座っています。YouTubeにマインクラフトのプログラミング解説チャンネルを自分で起ち上げて英語で発信しつつ、他のマインクラフトに関連したYouTuberの解説で気になる技術のチェックも怠らないなど、プログラミングのスキルアップに余念がありません。教育の話になるとよく『これからは英語とプログラミング』と言いますけど、そういう親の意図はなく、息子が今まで生きてきて一番情熱を注いだのが、たまたまプログラミングを要するマインクラフトだっただけなんです。ならば、とことんやらせてあげようかなと。私には、何が楽しいのかさっぱりわかりませんけど(笑)」

小学4年生の創生(そう)くんは、8歳の誕生日プレゼントにニンテンドーDSを希望したが、DSよりも幅広く遊べるiPadを両親がプレゼントしたところ、iPadから入って次第にパソコンのゲームで遊ぶようになったそう。お母さんのゆうこさんは、テックキッズキャンプに参加して帰って来た日は、なかなか寝付けないほど興奮していたという創生くんの様子を語ってくれた。

「主人の仕事が広い意味ではIT関係なので、専門書が家にたくさんあるのですが、気付いたら息子がそれを読んでいて(笑)。学校にはパソコンでゲームをやったり、ましてやプログラミングをやっているお友だちなんていないので、ここに来て、同じ価値観を持った同じ年代の友だちと話せたり、メンターの方たちから専門的な話を聞けるのが何より嬉しいみたいで、キャンプから帰って来た夜はなかなか眠れないほど興奮しています」

「転ばぬ先の杖」として親が子どもに「させている」習い事かと思いきやどうやら違うようだ。また、IT関連企業に勤めている親の子ばかりでもなさそう。親の巧みな誘導はあるものの、ゲーム好きから自然な成り行きでプログラミングに興味を持った子どもたちが、自発的に「やりたい」と参加していることがよくわかった。CAテックキッズ広報の前田淳子さんは「そもそも子どもたちに、学んでいるという感覚はない」と言う。

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「テックキッズキャンプでは、教材を見ながらプログラミングソフトやプログラミング言語を用いて、3日間で3~4つのゲームを作り、最終的には自分だけのオリジナル作品を完成させ、その創意工夫点を参加者全員の前でプレゼンテーションします。1日に約6時間。途中に休憩やお昼休憩を挟みますが、子どもたちはその間もパソコンの前を離れようとしません。子どもたちにとってプログラミングは、今、一番楽しい遊びなんです」

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まるで、折り紙や粘土で遊ぶようにパソコンで遊ぶ(プログラミングする)子どもたち。参加者の8割以上はプログラミング初体験という。ブラインドタッチとまではいかなくても、タイピングやマウス操作に不安のない子たちが大半だそう。この日は35人の参加者のうち2人が女の子だったが、普段は全体の2割くらい女の子もいるらしい。

子ども学び方と大人の学び方の違い

プログラミング経験のない筆者も、子どもたちと同じ教材を使ってプログラミングに初挑戦してみた。Scratchゲーム開発コース、Minecraftプログラミングコース、iPhoneアプリ開発コース、Webアプリ開発コースなど選べる8つのコースの中から、一番簡単だと勧めてもらったScratchゲーム開発コースを選び、「ネコネコパニックゲーム」というシューティングゲームを作ることに。

Scratchはタイピングなどでテキスト入力をする必要がなく、マウス操作で命令ブロックをパズルのように組み合わせるだけでプログラムすることができる子ども用のプログラミング学習ソフトだ。

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教材には「ネコが動くようにしよう」「ネコを小さくしよう」と、これからやるプログラムに簡単なタイトルがついており、実際にパソコンで開いている画面と同じ画面が大きく描かれている。そして、操作手順がナンバリングされていて、クリックするタブ、選ぶ命令ブロックには赤い太線で囲ってあったり、選んだ命令ブロックを引っ張っていく場所に赤い矢印が引かれているなど、テキストを読むというより視覚的に操作がわかるようになっている。なるほどこれなら、子どもはもちろん、パソコン操作に慣れていない人でも問題なくできるだろう。それくらいやることは明確で簡単だ。

…ところが。いい大人である筆者が、子どもたちと同じ教材で学んで感じたのは、そこはかとない不安だった。テキストに書いてある通りにひたすら作業を進めるだけなので、今、自分が何のためにこの作業をしているかがわからない。プログラミングの原理はもちろん、一つひとつのタブの意味、命令ブロックの意味、何をしたらどう動く、そのために今この作業をしているという説明が、事前に得られないことに不安を感じた。子どもたちは、この不安を感じないのだろうか。前田さんにこの疑問をぶつけてみた。

「大人の学び方と、子どもの学び方の違いだと思います。子どもたちは事前に説明を受けるよりも、とりあえず見よう見まねでやってみることで、『こうやればこうなるんだ』と自ら規則性を発見する能力に長けています。逆を言えば、そうやらないと身にならないとでもいいましょうか。大人にするような言葉を尽くした説明は、子どもの頭には入らないし、どんどん抜けていってしまいます。だから、まず見よう見まねでやってみて、トライ&エラーを繰り返しながら自分が気づいたことだったり、カタチになっていく喜びに触れていく方が、子どもの理解が速く、なおかつ深くなります。遊んでいるようで実は学べているのが、子どもの教材の理想だと私たちは考えます」
自ら規則性を発見すると、理解が速いだけでなく深い。その証拠に、テックキッズキャンプの最終日である今日は、教材を見ながら作ったゲームにオリジナルアレンジを加えたものを一人ひとりがプレゼンテーションする。もともとシューティングゲームだったものを間違い探しゲームにアレンジしてしまうなど、大人も舌を巻く離れ業をやってのける子もいるそう。プログラミングにとどまらず、プレゼンテーションを設けている理由を前田さんに聞いた。

「プログラミングだけしていれば、仕事になる世の中ではもうすでにないですよね。子どもたちも『アイデアをカタチにして発信するまでがお仕事だよ』と伝えています。社会に対して積極的に働きかける姿勢と、人前で話すことに物怖じしない度胸をつけてもらいたいんです」

檀上に立ってマイクを持ち、自分が作ったゲームの動画を見せながら、創意工夫点を発表する子どもたちの顔は、緊張でこわばりつつもどこか誇らし気だった。

将来の夢は、北島康介選手みたいなオリンピック選手

テックキッズキャンプの最終日を終えた子どもたちに、キャンプに参加した感想と将来やりたい仕事について聞いてみた。話を聞いた3人とも、一番人気のMinecraftプログラミングコース(プログラミング言語Luaを用いる本格プログラミングコース)を受講した子だ。

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Life is Tech! キャンプに参加したお兄ちゃんが楽しそうにしていたから、自分も習いたくなってキャンプに参加した丞くんは、「タートル(※1)の動かし方とか、文字を打ち込む必要があったから少し難しかったけど、自分が組んだプログラミングでタートルが自動で動いたり、出来た時の達成感が凄かった。将来の夢は、北島康介選手みたいな水泳のオリンピック選手になること」。
(※1)プログラム可能な自立型ロボット。プログラムすれば様々なことができるようになる

自身のマインクラフトのプログラミング解説チャンネルを持つYouTuberでもある峻くんは、「プログラミングって、すごい難しいし、時間がかかるし、疲れるけど、すごいカッコいいものが出来たりすると、作ってよかったっていう気持ちになる。将来の仕事? まだ考えていません」。

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同世代のパソコン好きやメンターと話せることが、テックキッズキャンプに来た何よりの収穫という創生くんは、「前にやったことがあるブロックを組み合わせるプログラミングじゃなくて、今回はタイピングが必要だったから、少し大変だったけど、勝手にタートルが動いてくれる命令ができたりして面白かった。今はプログラミングが一番楽しいけど、将来のことはまだよくわからない」と話してくれた。

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テックキッズキャンプに参加したり、テックキッズスクールに通う子どもたちを見ていて感じること。また、そんな子どもたちが大人になる未来、私たちに問われる能力について前田さんに聞いてみたところ、あくまでも私見という前提でこう答えてくれた。

「幼少期にプログラミング学習で身につける、論理的思考力やトライ&エラーを繰り返しながらカタチにしていく実現力は、どんな仕事に就いても活かされると思います。大人は欲しいものがあると、売っているお店を検索したりして探しますけど、子どもは欲しいものがあれば作っちゃいますよね。自分だけのおうちが欲しいとダンボールでお城を作るように、ここで学んだ子たちは、まだこの世にないサービスやゲームをプログラミングで作り出す。工作とプログラミングは一緒なんです。でも、サービスやゲームが作り出せたことによって、子どもは幼少期の自発性を損なうことなく大人になっていく。10年後、20年後の未来には、自発的で柔軟な発想をカタチにする技術力に長けた、子どものような大人が増えるのではないでしょうか。私たちが10年後、そんな彼らとともにどう働いていくべきか。チームビルディングやコーチング能力をますます問われることになるのだろうと個人的には思います」


前田 淳子

株式会社CA Tech Kids 広報担当。2013年4月、株式会社サイバーエージェントに入社。サービスプロデューサーとして、複数のコミュニティアプリの運用を担当。2015年より日本最大級のアバターコミュニティサービス「アメーバピグ」のゲームプランナーに。2016年4月にCA Tech Kidsに入社し、広報担当に就任。


TEXT BY ASUKA USAMI