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Life Shift

2016.10.14

2016年、地域コミュニティはオンラインで活性化する? 地域の課題を解決するSNS『マチマチ』

「ご近所さんと話そう。」をキャッチフレーズとするご近所SNS『マチマチ』。自分が住む街のお店やイベント、防犯・防災などの情報交換を行うウェブサービスだ。ご近所で知りたいこと、困っていることを、近所に住む人とともに解決し合うことで、コミュニティの活性化と、地域の課題解決を目的としている。
過去にも数多の地域SNSが存在してきたなかで、2016年のいま立ち上がった『マチマチ』が描くビジョンとは。同サービスを運営する株式会社Proper代表・六人部生馬氏に話を伺った。

人と地域のミスマッチという課題

─ 『マチマチ』を始めた経緯を教えてください。

僕の実家は横浜で40年近く、地域密着型の不動産屋さんを営んでいます。そこでの気づきが『マチマチ』を生むきっかけになりました。同じように家を探しても、満足している人とあまり満足していない人がいます。なぜ、満足できない人が生まれてしまうのかと思い、僕は家探しをした人にインタビューを繰り返しました。

インタビューから明らかになったのが、満足している人はコミュニティベースで家を探しているということでした。例えば、友達が住んでいる街へ遊びに行くうちに、街を気に入って引っ越した人は、知り合いがいる安心感があります。また知り合いを通して、さらに知り合いが増えることもある。

満足していない人は、転職や転勤などやむを得ない事情でその土地に住んだ人が多い。知り合いもいませんし、住んでみて自分に合わないことに気づくという問題もありました。

インタビューを通し、コミュニティをベースに家を探せるサービスが必要ではないかと考えました。主婦や年配の方のような、長く街に住む、街に詳しい人に家探しのお手伝いをしてもらえないかと考えたんです。僕はプラットフォームを提供し、家を探しに来た人と、街の詳しい人をマッチングし、家探しのお手伝いをする。家だけでなく、スーパーや小学校、病院といった街の情報も案内してもらうというもの。これが実は『マチマチ』の原型なんです

─ 今とはだいぶ異なるサービスですね。

サービスを現実的に落とし込んでいくと、規制上難しいということに気づきました。ここで一度立ち止まり、「コミュニティをベースに家探しができない、そもそもの原因は何か?」を考えました。

その原因は『地域のコミュニティの衰退』にあるという結論に至りました。地域コミュニティが衰退し、少なくなっているから、そういった探し方ができない。そこで地域コミュニティが衰退することにより生じている地域の課題に気づきました。このより大きな課題を解決するために「地域コミュニティを活性化するためのサービス」を考えたのです

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我々は「ご近所の人々とのつながりを通して、地域の課題を解決する」をミッションに掲げています。日本は、人口減少や少子高齢化、待機児童などさまざまな課題を抱えています。そのなかには、地域が解決できる課題も多いのではないでしょうか。

親と離れて暮らすお母さんが、子育てで孤独になる。高齢になった老人が孤独に暮らしている。病気で動けないとき近所に頼れる人がいない。地域とのつながり、ご近所さんが解決してくれる課題は少なくありません。

地震や災害のときに助け合うのは、遠く離れた家族や友達ではなく隣の人です。近所の人と話した他愛もない情報は、ときに防犯につながることもあります。地域の課題は行政が解決するものと考えられがちですが、自分の街の問題は、自分たちで解決する。マチマチは主体的に街に関わる人を増やしていきたいと考えています

いまだからみえる、マチマチの価値

— 近所づきあいって大変と考える人もいるのではないでしょうか?

実際、僕が地域コミュニティの話をすると、共働きで地域とのコミュニケーションの時間を割けない。近所づきあいは大変だといった相談を受けることもあります。『マチマチ』はそういった人こそ使ってみて欲しいと思っています。

スマートフォンで簡単にいつでも利用ができ、本人確認を行うので、怪しい人は入れません。投稿は全て実名で、投稿内容も運営側で監視するので、誹謗中傷などの問題はすぐに対処します。安心してご近所づきあいができる場を提供できることを重要視しているんです

─ 『ご近所さんを探せ!』や『まちBBS』など、地域SNSに近いサービスは昔からあるなか、なぜいま『マチマチ』をはじめたのでしょうか。

いまだからという理由は2つあります。1つはスマートフォンが普及していることです。ローカル情報の発信はスマートフォンの方が便利です。家に帰ってPCで「あそこの角のパン屋さんが…」とわざわざ書かないですよね。いま気づいたことをいま伝えたいのがローカル情報です。スマートフォンがあることでリアルタイムに情報発信ができる。この違いは大きいです。

2つ目はSNSの浸透です。SNSによって、知ってる人とも知らない人とも、オンラインで簡単につながれるようになりました。オンラインでつながることに多くの人が慣れてきたともいえます。また、オンライン上に実名を出すことへの抵抗も減ってきている。オンラインのつながりを取り巻く環境の変化も、『マチマチ』に追い風になると考えました

— 他サービスについてはどう考えていらっしゃいますか。

成功事例がないのは事実だと思います。僕は過去のサービスが上手くいかなかった一番の理由はマネタイズを急いだことにあると思っています。ほとんどのサービスは、最初からマネタイズを考えて作られていました。

広告など、ユーザーが求めている情報でないものが混ざることは、ユーザーにとってはストレスです。街の情報を流すだけであれば、ネット掲示板でも構いません。クローズドなSNSだからこそやれることをまずは考える。マネタイズはもっと後のフェーズで考えるべきことだと思います

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約6割のユーザーが継続的に利用する

─ サービスは現在どの程度拡大しているのでしょうか。

我々は最初、渋谷区に限定してテスト提供を行い、今年の6月から全国リリースを行いました。渋谷区でのテスト提供は、そもそもこのサービスを本当に欲しがる人はいるのか?の検証でもありました。正直我々も半信半疑だったんです。テスト提供の結果は、登録した人の約6-7割の方が継続的に使い続けてくれており、他のSNSと比べてもかなり良い数字です。これには驚きました。

─ どのような人が利用されているのでしょうか。

エリア的には首都圏の人が多いですが、北海道や千葉、鎌倉などの湘南エリアから沖縄まで、日本各地で幅広く利用いただいています。

たとえば自治会の人が、加入者が少ない若い世代を巻き込むために使っていました。

石川県では、地域活動をされている方に使って頂いているのですが、その人自身地域の人を繋げるサービスを開発しようとしていたそうです。マチマチがあることで私がやりたかったことが実現できたと話を頂いたこともありました。

あるマンションの管理組合では、マンションでコミュニティを形成するためにマンション全員で入っていました。みなさん、地域でまとまった方がいい、一緒にやった方がメリットはある、というのは理解していただいているんです。

マンションの場合ですと、顔見知りだとトラブルが少ないそうなんです。子供の声がうるさくてクレームになっていたものも、知っている人なら「〇〇さんの子供はまだ小さいからね」となるそうです。コミュニティの力って大事だなと改めて感じました。

ヘビーユーザーの方には、「チラシはないか?」という問い合わせを受けることもあります。いまはサービスサイトとブログからダウンロードできるようにしているのですが、チラシを印刷し近所の飲食店などに置いて頂いているそうです。地域を変えていきたいという熱量を持った方々は積極的に動いてくれる。まさに自分たちで地域の課題を解決しようとしてくれているのです

地域の課題を主体的に解決するサポーター

─ 今後はどのように拡大していこうと考えていらっしゃいますか。

情報発信の量を増やすことと、防犯情報が得られて危険を回避できた、などマチマチが活用された事例を地道に増やしていきたいと考えています。
以前ユーザーのお子さんが公園で遊んでいたら、不審者に声をかけられたという情報がありました。防犯情報は警察が持っていたりするのですが、警察としても知らせる手段がないというのが現状です。海外の地域SNSでも、防犯情報が集まることで有効活用されている事例が多い。マチマチも同様の役割を担っていくべきだと考えています。

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またマチマチでは、街探検イベント『マチマチあるき』を定期的に開催しています。7月に代々木で開催したイベントには約30人が集まりました。知らない人同士が地図を真ん中にして『ここにこんなお店がある』と話をする。コミュニティがリアルにつながって生まれる場です。

将来的にはイベントの運営方法等をマニュアル化し、日本全国で自由に活動を広げて欲しいと思っています。ただし、我々が主体となってやり続けるのは違うと考えています。あくまでも、その街に住んでいる人が、自分たち自身で、自分たちの課題を解決するのが大切です。我々は地域を自分たちで盛り上げるサポーターになれればと考えています


六人部生馬(むとべいくま)

神奈川県出身、横浜育ち。
慶應義塾大学法学部政治学科卒。ソフトバンク財務部投資企画室、UBS証券投資銀行本部にて数多くのM&A、投融資、資金調達に従事。サイジニア(2014年マザーズ上場)にて事業開発、資金調達を担当し、上場への道筋をつける。その後、メガネECのオーマイグラスを創業し、共同創業者/取締役COOとして経営全般に従事。株式会社Properを創業し、「ご近所とのつながりを通じて、地域の課題を解決する」というミッションのもと、ご近所SNS「マチマチ」を開始。


PHOTOGRAPH BY KAZUYA SASAKA
TEXT BY HIROYUKI OHASHI
EDITING BY KAZUYUKI KOYAMA