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Life Shift

2016.09.16

“無報酬、志を共にする者が集う”『InstantTeam』が世に問う次世代のコラボレーション

平日の13時、都内のカラオケボックスで、ピザを頬張りながら談笑する3人の男性。1人は30代、あとの2人は20代だろうか。軽い敬語混じりではあるものの、冗談を言い合って笑う気の置けない親しげな雰囲気からは、学生時代の部活の先輩と後輩のそれを感じさせる。しかし実際、この3人が出会ったのは、たった2カ月前のこと。『InstantTeam』というソーシャルマッチングサービスがきっかけだった。

ある即席チームの挑戦とそれぞれの想い

何か新しいことを始めたいけど仲間がいない。そんな時、スキマ時間に集まれる即席チームを作れるソーシャルマッチングサービス『InstantTeam』。プロジェクトのスタートアップや勉強会、サイドビジネスなど目的はそれぞれだが、仲間を集めて何か新しいことを始めたい人がチーム運営者となり、サイト上にチームを起ち上げ、参加メンバーを募る。2016年9月現在、186チーム 1,304名が登録している。

カラオケボックスに集った3人は、その『InstantTeam』上の「どこにもない音楽系サービスを考えてみる会。」のメンバーのうち、チーム運営者・川上 剛弘さん(37歳)と主力メンバーの2人だった。川上さんはなぜ『InstantTeam』を利用して仲間を募ったのだろう。

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チーム運営者・川上 剛弘さん

「素人向けの作曲アプリを作りたくて、『InstantTeam』でエンジニア、デザイナー、プランナー、マーケターなどを募集しました。僕自身はもともとWebデザイナーなのですが、アイデアはあるものの楽譜は読めないし、音楽プログラミングをいじった経験もありません。また、音楽に詳しい友人・知人もいませんでした。仲間になってくれる人を探そうと勉強会に参加しても業界人ばかりで、ど素人の私のアイデアに賛同し、同じ目線でイチからモノ作りを楽しんでくれる人がいない。それまで勤めていた会社を辞め、このアプリのスタートアップに賭けている僕は焦りました。そこで『InstantTeam』を活用。ここにいるイッセイとトモはInstantTeam上で、自分から声を掛けたメンバーです。イッセイはフリーランスの作曲家で、このチームでの役割はコンサルタント兼アドバイザー。トモは大学4年生で、このチームでの役割はプログラマー。メンバーは現在13人いますが、このふたりはコアメンバーで、週1くらいの頻度で会いミーティングを重ねています」

今日のミーティングのテーマは「プロの作曲家から作曲方法を学ぶ」というもの。キーボードを使うため音の出せるカラオケボックスに集まった。イッセイさんに倣って作曲にチャレンジしながら、年内の完成目標に向けてアプリの仕様を詰めていく。参加メンバーであるイッセイさんとトモさんにも『InstantTeam』を利用した理由を聞いた。まずはイッセイことプロ作曲家である村井 一成さん(23歳)から。

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作曲家・村井 一成さん

「同じ会社がやっているマッチングサービス『TimeTicket』を利用していたことがきっかけで『InstantTeam』を知りました。フリーランスの作曲家という仕事柄、こもって作業することも多く、音楽業界以外の人とはなかなか知り会えません。いろんな業種・職種の人と出会うことで、仕事の幅を広げたくて『InstantTeam』に登録しました。音楽カテゴリーのチームがまだ少なく、私はこのチームにしか参加していませんが、今まで知り会えなかったような人たちと出会い、仲間になって新しいサービスを作る。すごく刺激的な日々が始まりました」

トモこと大学4年生・福本 知信さん(23歳)は、学生起業も視野に入れ様々な活動に参加するプログラマー。このチームでの役割は作曲プログラムを作ること。

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大学4年生・福本 知信さん

「『InstantTeam』は出来たばかりのサービスだから、アンテナの高い人、面白い人が集まっているんじゃないかなと期待して登録しました。大学には音楽系に強いプログラマーがいません。勉強会のマッチングサービスを利用して、仲間探しをしたこともあるのですが、なぜかその場限りになってしまう。でも『InstantTeam』は、それぞれのチームに目的があって、チーム運営者や他の参加者と気が合えば、その目的に向かう同志として継続的に関係性が構築できる。徐々に仲間になっていく感覚があります。面白いですね」

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仲間になるのに必要なコト

『InstantTeam』は原則として、チーム運営者から参加メンバーへの報酬など金銭のやりとりを禁じている。報酬なしで繋がるのだ。自分の知識や技術を差し出しても無報酬。その点について、参加メンバーであるプログラマーのトモさんに率直な気持ちを聞いた。

「お金の話? してないですね(笑)。もしこのアプリがリリースされて儲かったら…その時は、川上さんとの話し合いでなんとかなるんじゃないかな。もうそういう仲間だと思っていますから。報酬がどうこうよりもスタートアップに関われる興味の方が、今は勝っちゃっているというのが正直なところです」

チーム運営者の川上さんにも自分のアイデアに賛同し、時間を見つけては集まってくれる仲間に対してどう思っているのかを尋ねた。

「お金よりも新しいサービスをイチから作れる、そういうチャンスの方に価値を置く人が集まって来るように思います。自分は今作っているこのアプリに賭けています。スタートアップなんてお金がないのが前提ですし、軌道に乗ったとしてもお金が払えなくなったら去っていく人は初めから要らない。まずは想いや熱意で繋がることが一番だと思います。そういった意味でも無報酬を前提とする『InstantTeam』は理想的です。もし自分たちのチームが作ったアプリがヒットして起業するとなった際には、イッセイとトモをボードメンバーとして迎えるつもりです。彼らがそれを良しとしてくれるなら、ですけどね(笑)」

今、必要とされる『InstantTeam』というチームビルダー

『InstantTeam』というマッチングサービスそのものを起ち上げたのは、株式会社レレレのソロ起業家・山本大策さん。起業から4年で、普段会えない人と気軽にお茶ができる『CoffeeMeeting』、個人が気軽に空き時間を売買できる『TimeTicket』、そしてスキマ時間に集まれる即席チーム『InstantTeam』という3つのソーシャルマッチングサービスを起ち上げた。すべてのサービスを併せると累計10万人が山本さん作ったサービスを利用して出会っている。

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「実は異業種交流会のような不特定多数が集う、出会いの場みたいなところが苦手で(笑)。そんな自分が人と出会いやすい仕組みを作りたいという思いから起業しました。私自身『CoffeeMeeting』や『TimeTicket』を利用して500人くらいの人と実際に会いしました。すると、“何か始めたい”という漠然とした思いを抱えた人が多いこと。加えて、その人たちが“(スタートアップやイベントなどを)一緒にやってくれる仲間”を必要としていることが分かりました。いきなり報酬の発生するような既存のチームビルディングサービスとは違う、同じことを面白いと思える人と人とがもっと“ゆるく繋がれる”サービスがあったら…というのが『InstantTeam』を開発した経緯です」

『InstantTeam』にはFacebookでユーザー登録(無料)することができる。ユーザーは自分のチームを作ったり、キーワード検索で興味のあるチームを探し、そこにメンバーとして参加することができる。チームを作るといっても簡単なもので【チーム名】【自分の役割】【募集するメンバーの役割】【一緒に食べたいもの・飲みたいもの】などをフォーマットに入力するだけ。わずか3分足らずで自分のチームが作れる。ただし、複数のチームを作成したり、4人以上のメンバーを承認する(仲間になる)場合は、そこからは有料となる。メンバーとしてチームに参加する場合は、複数チームに参加したとしても無料。チーム運営者から承認を受けたら、自分の都合とリアルに行われているチームミーティングの時間が合えば参加すればいいし、一度参加してみて、チーム運営者や他の参加者と気が合わなければ脱退も自由だ。

チームの目的を表す名をいくつか見てみると「ペライチのかゆいところに手が届く機能を一緒に作ってくれる週末開発メンバー募集!」、「アイデア共有系サービスを作ろう!」、「超高速回転で新規ビジネスについて語り合いながら飲んだくれる会」と様々で結構漠然としたものが多い。しかし、山本さんはこの“ゆるさ”が大事だと言う。

「お金をもらってやる仕事なら、やることがはっきりしている方がいいです。でも、『InstantTeam』のように、本業の手が空く時間を使ってまでやりたいことは、何だかよくわからないけど面白そうな方がいい。『InstantTeam』に登録しているユーザーさんたちは、仕事の幅を広げたい、スキルアップしたい、新しい価値を創造したいといった前向きな人ばかりです。与えられた仕事をこなすのではなく、仕事を作り出せる人が集まりやすい。だからこそチームに参加した時、自分で自分のやりたいことを決められる余白がたくさんある方がいいんです。チームへの出入りも自由。チームがプロジェクトを達成できなくても、そのチームを去ったとしても、人的ネットワークは残るので、その中の気の合うメンバーと違うプロジェクトに取り組むことだってできます」

いつでも扉が開かれている出入り自由のチーム。シンプルなチームプロフィール内に、チーム運営者が仲間と【一緒に食べたいもの・飲みたいもの】の記載を設けたのもメンバーがチームに参加しやすくするためと山本さん。

「ビール、コーヒー、肉、ケーキ…。何をチョイスするかで、チーム運営者のキャラクターがわかるし、ビールなら居酒屋でワイワイ、コーヒーならカフェでサクッとなど、自分が参加するミーティングの情景や雰囲気が想像しやすくなると、ハードルがグッと下がりますよね。参加の段階から“ゆるさ”を大切にしました」

会社への帰属意識がなくなる未来に

『InstantTeam』は会社に帰属することに疑問を持ち始めた人々の受け皿にもなり得ると山本さんは続けた。

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「若者はすでに終身雇用の時代は終わったと悟っています。正社員として一社に帰属するのはリスキーであると知っているんです。今後ますます、優秀な人材ほどフリーランスという立場をとって、プロジェクトごとに複数社から仕事を受ける(報酬を得る)という働き方をする人が増えていくでしょう。ひとつの会社に籍を置き、副業も許されず、9時~5時で働くという働き方がスタンダードでなくなる日も近い。『InstantTeam』はそういう時代が訪れる前段で、『自分が面白いと思ったチーム(プロジェクト)に出入り自由という働き方もありですよね?』という問いかけにも似たサービスなんです」

働き方や仕事そのものに対する意識に問いかける『InstantTeam』。ここでゆるく繋がった人々が、新しいサービスを生んだり、新しい会社を起ち上げたりする可能性も十分にあり得る。とすると「仕事」って一体なんだろう?

「僕にとって仕事とは、気づいたらやってしまっていること。ついつい気になって手が動き、その成果が誰かのためになっているのが仕事だと僕は思います。会社にいること、が仕事ではない。『InstantTeam』のような考え方(仕組み)が世に広まっていくと、仕事をするのに肩書きはもちろん年齢・性別・国籍も関係がなくなります。ある程度のコミュニケーション能力とスキルさえがあればいつだってどこでだって仕事になる。プロジェクトごとにゆるく繋がることを許容できる余裕やマインドがある人や会社が、勝ち残っていく社会になるのではないでしょうか。その方が面白いですしね」

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山本 大策

株式会社レレレ 代表取締役。1978年広島生まれ。法政大学社会学部卒業。みずほ情報総研株式会社、フィードパス株式会社、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズを経て、2012年に株式会社レレレを設立。会社設立後は、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会えるサービス『CoffeeMeeting』、個人が気軽に空き時間を売買できるサービス『TimeTicket』、スキマ時間にゆるくつながるチームを作れるサービス『InstantTeam』を開発し、運営。これらのサービスを利用して出会った人たちは累計10万人を超えるなど、ネットとリアルをつなげる新しい仕組みを生み出し続けている。企画・デザイン・プログラミング・運営、すべて一人で担当するソロ起業家。


TEXT BY ASUKA USAMI
PHOTO BY KAZUMI NIIMI