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Life Shift

2016.07.21

デジタルネイティブ世代のクリエイターの素顔 小学6年生は叫ぶ「母ちゃん、俺、音楽家になる!」

今や、3歳児ですらスマートフォンをスワイプする世の中。デジタルネイティブ世代の常識とは一体どういうものなのか。そこで、今、電子音楽業界で最も注目の若手クリエイター・鈴木椋大の頭の中を覗いてみる。オープンリールを扱い、伝説の音響デザイナー・大野松雄を師と仰ぐ若干11歳。そのキャラクターはどのように育まれ、そしてどのように開花していくのか。その歩みを紐解いていく。

鈴木椋大の現在

LifeShit編集部(以下L)あだなは?
椋大(以下R)ららっこ。
L ららっこ?
R そう。でも、本当のあだなじゃないか。本当は「リョウタ」。
L ちなみに「ららっこ」の由来は?
R ラッコが好きだから。
-母解説➀(彼は映像作家もやっていて、映像作家のときの名前です。千葉県・東金市のPR動画のコンテストがあって、それに3度入賞しているのですが、でも1回も表彰式に行っていなくて。謎のクリエイターになっているらしいのですよ)
L なるほど、じゃあ、続けますね。好きなものは?
R 音楽。
L 嫌いなものは?
R 算数。
L 何で嫌い?
R 最近はそうでもないけど、テストが苦手で・・・。
-母解説②(算数のテストは10点台が続いていて。彼は、「1」と「0」などの数字の概念を理解するのがとても大変でした。小学校1年生のとき「1+1は2」、「1+0は0」と、どうしても「0」になってしまって・・・。文字そのものの数字と実世界の物質としての数字を理解することが難しかったのです。もので1つひとつ説明するとわかるのですが、理解させるのにとても時間がかかりました)
R 九九もね。すごく間違えたよね。今も時々。
-母解説③(小さな頃から、この人は変な人だなと思っていたけど)
R えーっ!
-母解説④(考え方や捉え方が、私とも他の子とも違うなとはよく思っていました。今は、勉強がますます難しくなって大変ですが、好きな勉強は、とことん調べよく理解していて、好きこそものの上手なれだなと感じています)
L 好きな食べ物は?
R お蕎麦!麺類!
L 嫌いな食べ物は?
R ナス。というか、野菜。食わず嫌いかな。好きな野菜もあるけど。
L 好きな色は?
R 茶色。
L 茶色?
R シンセサイザーのMOOG III-Cの色だから。
L 尊敬する人は?
R 冨田勲さん、大野松雄さん、松武秀樹さん、大友良英さん、レイ・ハラカミさん、和田永さん、no.9さん、宮内優里さん、U-zhaanさん、蓮沼執太さん。なんか年寄りばっかだね。
L お母さんの好きなところは?
R 音楽のことというか、僕が好きなことにはお金を出してくれる。
L 君のやろうとしていることを応援しているということだね。泣けてくる。
-母解説⑤(一応公約としては、彼が大きくなったら・・・)
R 返すんだよね。
L 今、一番欲しいものは?
R MOOG III-C!あー、欲しい、欲しい!

まずは、今どきの小学生の素性を知るべく一問一答からインタビューを始めたが、小学生らしい受け答えの中にも、ところどころに逸材たる片鱗を垣間見ることができる。鈴木椋大11歳。今、注目のクリエイターだ。打ち込み音楽と電子音楽を主戦場に、オープンリールを使ったパフォーマンスやlittleBits(リトルビッツ)とLEGOを組み合わせた音遊び、iPadのアプリで音楽や映像を作り、さらには電磁波と生活音を利用した実験と、その表現に限りはない。最近では「DemoDay.Tokyo」で披露したオープンリールとSONYの新製品「グラスサウンドスピーカー」を使ったマルチサウンドのパフォーマンスが注目を集めた。

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鈴木椋大の過去

いかにして、鈴木椋大は今にいたるのか。その原体験を母・智子に聞いた。実は、この親子、「りーるとぅりーる」という親子ユニットを組んで、音楽活動やアート活動もしているのだ。

「小さな頃から音に敏感でした。風の音や鳥の鳴き声とか。風が吹いて窓の格子が振動して音が鳴っているのを聴いて『風がバイオリンを弾いているよ』って言ってきたり。あとは、テレビのNHK交響楽団の演奏をじっと見ていたのを覚えています。それで、4才の頃にYouTubeの使い方を教えてあげたら、どんどんのめり込んでいって、YMO、レイ・ハラカミ、クラフトワークと関連動画伝いに彼の思考が構築されていきました」

これぞ、デジタルネイティブ世代特有の話ではないだろうか。一昔では考えられない体験である。確かにテクノロジーはぼくらの日常を変えている。そして、2011年、衝撃的な出会い第一弾があった。それは、母・智子がそのコンセプトに共感し、連日ライブで参加していた、Androidスマートフォン「GALAXY S Ⅱ(SC-02C)」を実際に宇宙へ打ち上げる「SPACE BALLOON PROJECT」だ。いや、正確にいうと、「SPACE BALLOON PROJECT」で使われていた音楽である。それは、オープンリール式のテープレコーダーを改造して楽器として演奏するバンド・Open Reel Ensembleの楽曲だった。

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鈴木椋大の覚醒

「母ちゃん、この音は何? 何で作っているのだろうね。聞いたこともないし、でも何だかとてもかっこいい!」それが最初の感想だったという。今や便利なもので、それが何かであるかはインターネットで検索すれば、すぐに判明する。オープンリールは、音を録音して再生するための機械であるが、YouTubeでみたOpen Reel Ensembleのパフォーマンスは、これをスクラッチしたり、巧みに操り圧倒的な世界観と音楽を作り出していた。その後すぐに、YouTubeで彼らの動画を見まくったのは言うまでもないだろう。そして、2013年、Open Reel EnsembleがOpen Reel Orchestraを結成すべく、楽団員を23名募集するというチャンスがあった。その当時の様子を母はこのように語る。

「『やってみる?』と聞いたら、いの一番に『絶対やる!』って。一応、小学生でも参加してもいいのかお聞きしたら問題なかったので、迷うことなく参加させました。『すごいな!!母ちゃん!』と目をキラキラさせて、オープンリールを初めて触ったときのことを今でも覚えています。生でライブを観たときも、相当興奮していましたね」

そして、衝撃的な出会い第二弾が訪れる。伝説の音響デザイナー・大野松雄との出会いだ。数年前話題になった映画「アトムの足音が聞こえる」が記憶に新しいところだろう。手塚治虫好きでもある親子は、ある日ラジオ番組で、この世には存在しない音を初めて作った人についての映画「アトムの足音が聞こえる」を知る。何の前情報もなしにその映画を観に行くと、大野松雄の偉大さはもちろんのこと、今まで何度も観てきた大好きなOpen Reel Ensembleやレイ・ハラカミらが出演していたという。

普通の子供なら「アトムの足音」ではなく「アトム」のほうに、むしろアニメそのものに興味を持ってしまいそうだが、そこは普通の小学生とは少し違うところ。その後、縁がありDOMMUNEで大野松雄の神の業を生で観ることになる。「HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE 2013 」にて、大好きなOpen Reel Orchestraと大野松雄が共演したのだ。小学生でDOMMUNEというのも何とも・・・ではあるが、以前から親子でDOMMUNEをよく視聴していたとのこと。そして、実際に目撃したそのリールさばきや圧倒的な音の存在に大いに感銘をうけ、弟子になりたい、そう思い立つ。ここから鈴木椋大と大野松雄の交流が始まった。大野氏曰く「孫のような弟子のような存在」だそうだ。

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鈴木椋大の成長

初めてデジタルで作った曲は、9歳のOpen Reel Orchestraの卒業時に、先生たちへの御礼の気持ちを込めて作った「第九」のアレンジバージョン。その後、大野松雄がLogic Proを使って作った音に感銘を受け、初めてLogic Proを使ってパソコンで一から作曲構成したのが「ゆたかなそうげんとあおいそら」。実はこの曲、坂本龍一氏をゲストディレクターに迎えた札幌国際芸術祭2014のコンペに生まれて初めて出品したものなのだが、箸にも棒にも引っかからなかったそうだ。「初めてだし、当たり前だよね」と鈴木椋大は、その頃の感想を話すが、一方、母は「とにかく作り込んでいく作業が初めてのことばかりで、とても勉強になりました。その後は、色んな方から『バランスもよくて、とてもいいよ』と褒めて頂いたのがありがたかったです。一曲仕上げて発表したという経験は貴重だったと思っています」と当時の様子を振り返る。そして、こんな質問を投げかけてみた。


L オープンリールに出会って、生活は変わりましたか?
R 結構、変わったよね。だって、大野さんにも出会って、音楽を作るようになったし、「りーるとぅりーる」も結成したし。SoundCloudやYouTubeを使って皆に作品を見てもらったり、コンペにも応募したり。音楽好きの友達も増えたしね。
L 性格も?
R うーん、わからない。
-母解説⑥(正直にいってごらんなさい。変わりましたか?)
R わからない!
-母解説⑦(親の私からみたら、まったく変わっていません!)
R でもね、俺、変わったことがひとつだけある。初めて話すけど、寝ているとき、夢の中で必ず音楽が流れる。夢が変わった。
L ノイズとか?知っている音楽が流れるの?
R いや。
-母解説⑧(知らない曲なんだ。私もこの話は初めて聞きました。小室哲哉さんは、夢に出てきた曲をかいてヒットさせたって聞いたよ。あなたもやってみたら?)


このように9歳から始まった鈴木椋大の音楽活動は、今、トライ&エラーを繰り返し、進化させ、様々な可能性を日々模索している。昨今、オープンリールという昔ながらの機械を使い、グラスサウンドスピーカーのような最先端の機材を組み込むといった新しい試みにも挑戦しているが、自分のアイデアや表現が形になっていく魅力について聞いた。

「昔の機械と新しい機械、それを使って身近な音を混ぜ合わせると魅力的な音ができるというか。古い空気と新しい空気を混ぜると、新たな空気が生まれる。でも、古い、新しいはそんなに関係なくて、音という共通のものを混ぜ合わせることで、新しい音が生まれると思っています。それが楽しいです」

頭の中を整理しながらゆっくりと話す11歳のその姿は、今日これまで見せたそれとはまた違う一面をのぞかせた。

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鈴木椋大の未来

最近では、海外へ作品を出品している。昨年開催された20世紀フランス現代音楽の偉才、リュック・フェラーリの偉業を称え設立されたパリのプレスク・リヤン協会主催の2年に1度の国際コンクールで評価される。また、アンスティチュ・フランセにて開催された、フランスのアークスモニウムのコンテスト「CCMC2016」に入選。親子で複数台のスピーカーを駆使して、初演奏をした。そして、6月には、雑音音楽と言われるイントナルモーリを作ったルイージ・ルッソロのコンテストが開催され、それに出品したそうだ。そこでの取り組みは、Open Reel Ensembleの和田永主催のプログラム、エレクトロニコス・ファンタスティコス!も実験的に行っている、ラジオを受信機として利用し電磁波を拾う方法を使い、オープンリールとパソコンで楽曲を作っているそうだ。何から電磁波を拾ったかというと、電車のモーターから発せられる電磁波を使い、電車そのものを楽器として捉えた。これは、おそらく世界初の取り組みであり、そして、実に鈴木椋大らしいユニークなものである。常々、鈴木椋大は、面白いことを世界に発信したいと話しているそうだが、今後具体的にはどんなことをしたいのか?


R 海外で演奏してみたい!・・・もうちょっとしたらかな。
L 具体的には?
R アメリカ。やりたい、やりたい!
L アメリカの?
R ニューヨーク。
-母解説⑨(もう少し、人前に立つ練習が必要だね)
R そう、アップアップだもん、今だって。


オープンリールに夢中になった11歳の夢はどこまで続くのか。その可能性は、とどまるところを知らない。いつか手に入れるに違いない、MOOG III-Cでどんな音を作るかも今から楽しみだ。そういえば、一問一答の最後の質問は「将来の夢は?」だった。


R 音楽家!


その答えに、迷いは全くなかった。

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鈴木椋大

2004年、千葉県生まれ。親子ユニット「りーるとぅりーる」の他、最近では古い電化製品を使ってオリジナルな楽器を産み出してきたOpen Reel Ensemble和田永が、あらゆる人を巻き込みながら新たな楽器を創作し、量産し、奏法を編み出し、徐々にオーケストラを形づくっていくプログラム「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の NICOS Labチームとしても参加。ジャンルに囚われず色々な『もの、こと』を楽しみながら、音楽を発信し、リールの様に繋げて世界を面白く響かせたい!と志す。音や映像作品、および活動はTwitterやFacebookで随時更新中。


PHOTO BY YOICHI ONODA
TEXT & EDITING BY SHUNYA HORII