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Life Shift

2016.03.28

世界が認めた日本発のスマホ「NEO」 “個”をもったデザインがスマホのニュースタンダードになる!?

このところパーソナル デバイス ラヴァーたちの耳目を集めているブランドにNuAns(ニュアンス)がある。星川哲視社長率いるトリニティ株式会社が展開する、デジタル デバイス関連アイテムのブランドなのだが、昨年11月30日に日本初のContinuum for Phone対応のWindows 10 Mobile搭載スマートフォン、NuAns「NEO」を発表。この1月から販売を開始したのだ。そしてNuAnsの4つのプロダクトが”デザイン界のオスカー”とも称されるiFデザインアワード2016を受賞。BANDWIRE(Lightningケーブル)、TAGPLATE(Lightning付きモバイルバッテリー 6000mAh)、ROLLDOCK(Lightning付きクレードル型モバイルバッテリー 3000mAh)、CONE(Lightning Dock付きスピーカーライト)の受賞は、いずれもグッドデザイン賞受賞に次ぐ快挙となった。それらデザインを手がけたのは、2011年に治田将之氏と青木亮作氏のふたりによって結成されたクリエイティブユニット、TENTだ。この快挙を成し遂げた三名のキーパーソンに、うかがってみた。「小さなユニットで、なぜ世界がうらやむ大きな成果を挙げられたのでしょう?」

-そもそもの三名は、どういったきっかけで出会われたのですか?

星川:NuAnsプロジェクトのアドバイザー兼「NEO」テクニカルディレクターである、永山純一さんにTENTのお二人を紹介してもらいました。
青木:私たちがTENTをおこした数年後でした。後にMAGDOTという製品になる、机や棚の裏に落ちてしまいがちなケーブル端子部分を留めておけるマグネットを持って、こういうの面白くないですか?と提案したのを覚えています。単なる磁石を持って会いに行ったんですから、今となってはその勇気に自分でも驚きます。
治田:星川さんからこういったものを作ってみたい、と相談されることもありますし、こちらから提案することもあります。そのスタンスは最初から変わっていませんね。
青木:私たちが急に思いつくこともありますから、上流下流関係なしで球を投げ合う関係です。
星川:私自身はデザインもエンジニアリングもわからないですから。なにしろあるのはイメージだけなんです。

-そういった方法論でのプロダクト化にはどういった困難がありますか?

青木:どういった困難、……いえいえ、困難しかありません!(笑)ツラいんですが、でも楽しさと表裏一体のツラさなんです。BANDWIREを例にすれば、これを製品化するときは他社であれば既成のケーブルを買ってそのまま使うのが普通です。でも星川さんは配線までこだわりそこから作ってデザインをまっとうしてくれました。

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星川:要は160mm、ショートタイプのLightningケーブルなのですが、初めて見る方はそうだとまず気づきません。収納するとループ的に一体型となり、両端子も保護されます。すぐグシャグシャになるケーブルを持ち歩くストレスからも解放されます。それでいてApple社認証「Made for iPod/iPhone/iPad」を取得していますから安心して使っていただける。携帯性に優れているばかりでなく、表面に3Dテクスチャーをもちいて質感を追求し、積極的に持ち歩き自慢したくなるLightningケーブルになったと思います。

治田:そこまで作るとケーブルに問題が生じた際のリスクも負わなければいけなくなりますが、いい製品、いいデザインにしたいという欲求が勝っている感があります。「やるって言ったらやるんだよ」と星川さんは非常に心強い。
星川:大変ですがデザイン、コンセプトの良さを通したかったんです。それまではスマートフォンケースや保護フィルムが主製品でしたから、製品化のノウハウもありませんでした。モックを持って工場に行き、サンプルを作ってもらっては「これでは厳しいですね……」というトライ&エラーの繰り返しです。だからイメージを思いつき、TENTのおふたりがモックを作るまではとても短時間でできるんですが、そこから製品化までにどうしても時間を要してしまいます。そのかわり、製品は殆どモックと一緒のものに仕上げます。最終的にするのはいつもサイズの微調整くらいですね。
青木:星川さんはやったことのないことをやる、製品化するという点のノウハウが凄い。
治田:トリニティは創業からずっとやったことのないことをやり続けていますからね。

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星川:NuAnsというブランド名には感覚的な「ニュアンス」に重きを置く、という意味と、ポータブルデバイスとともにあるライフスタイルへの新たな答え「ニュー アンサー」という意味のダブル・ミーニングなんです。だからなんか新しいことをやらないと、面白くないでしょう?というのはありますね。

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-そんな取り組みの姿勢もグッドデザイン賞、そしてiFデザインアワード2016受賞につながったのでしょうか?

星川:iFデザインアワードに関しては正直驚きました。特にこちらからプレゼンテーション等もしてなかったので、通知がメールで来たときは驚き、すぐにTENTに連絡しました。うれしかったですね。弊社は全社員で20名にも満たない規模ですから、その点でも快挙だと。
青木:見てくれる人はちゃんと見ていてくれているんだ、とうれしかったです。

-日本初のContinuum for Phone対応Windows 10 Mobile搭載スマートフォン、NuAns「NEO」のリリースに関してどういった反響がありましたか

星川:私の基本に自分が使いたいもの、自慢できるものを作りたい、というのがあります。「NEO」に関してもそれはなんら変わりません。ただ「NEO」のリリースで、初めてスマホが愛着を湧かせるものになったのではないでしょうか。上下2分割された別売りバックパネル「TWOTONE」を、ユーザーが選んで本体部分に組み合わせることで、自分好みに仕立てられるという特徴があります。しかも樹脂パネルだけでなく,ウッドシートやフェルト素材をまとったものなど,バリエーションも豊富です。これによって、普段持ち歩くアイテムながら、ケースぐらいでしか差別化できなかったスマホを、愛着を湧かせてくれるステーショナリーやバッグなどのそれに近づけることができたと思います。実は先日、伊勢丹新宿店で開催された「2016 HANABANASAI 花々祭」で展示、販売していたんですが、初日に仙台からお客様がいらしてくれました。大変熱心に見ていただいたようで、ありがたいですね。

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青木:最初に星川さんから打診というかお話があったのは、昨年3月頃だったと思います。もう本体のプロダクトは固まりつつあった状態でNuAnsにふさわしい製品になり得るかが焦点でした。私はちょっとひき気味でした。だって世界中の名だたるデザイナーが挑んでもiPhoneの亜流にしか見えないものばかりなのに、その渦中に入って大丈夫か?と震えました(笑)
星川:でもあのとき、治田さんは結構、乗り気になってくれましたよね。
治田:乗り気というか……。星川さんが「野望がある」と、とてもキラキラと微笑んでいたのが印象的でした。やがてそのキラキラが、デザインへの期待度を示していたと、身をもって知ることになるんですが。
星川:スペイン・バルセロナでの携帯電話の大見本市にて出展を行なった際には、足を運んでいただいた多くの人にNuAns製品は美しく、また非常にユニークであると気に入っていただけた印象でした。いくつかの新たな取引先と本格的な海外展開に向け、今後交渉していく予定です。

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-NuAns「NEO」の外箱はそのまま貯金箱になります。またTENTのWebサイト、storeサイトを見ると「メッセージ代筆ラッピングサービス ¥100」などとあります。どこか人懐こいテイストを感じますが、それもNuAnsの意図するところなのでしょうか?

星川:あの貯金箱は反響が大きくて、五百円硬貨のみなら124,000円入るそうです。ですから次期モデルの価格もそれくらいで……、とこれは冗談ですが。NuAns製品ではフェルト素材を多用していたりするので、ちょっと柔らかめなイメージに捉えられることもあるように思いますが、おつきあいしてみるとTENTデザインには非常にかっちりしたものもある。カメラメーカーやAV機器メーカーで世界的プロダクトデザインのフロントロウに在籍していただけあり、詰めは非常に緻密です。それを感じさせないからプロですね。
青木:デジタルデバイスだからこれでしょうがない、というロジックはもうあり得ないですよね。いつまでも〝金属+ガラス〟ではないでしょう。だから意図してフェルト等を多用している部分はあります。ただし使い勝手やディティールの追求は、堅い素材以上にしつこくしています。
治田:カンタンにできちゃいそうだけど、カンタンじゃない部分ですね。

-最後にみなさんの将来的なビジョンを教えてください

星川:デジタルデバイスの発達により、ラジオやTVがそうだったような〝1対マス〟だった情報伝達、共有が、〝個 対 個〟になりつつあります。またビジネスにおいては、かなりの意志決定が掌の上で可能となり、移動や手間が劇的に減りました。もはやデジタルデバイスは、人と切り離せなくなりつつあります。私はそのデジタルライフを、よりよきものに変えるプロダクトをつくり続けていたいですね。
青木:小さなものをつくり続けていると、無性により大きなものに関わりたくなることがあります。家具や乗り物などの大きなスケールのデザインに関わるのも面白そうだな、と。
治田:緻密なデジタルデバイスと対極にある家具とかのデザインにも興味があります。ゆったりしていて骨太で、時間的スパンが永いものへの憧れかもしれません。

NuAns
www.nuans.jp

TENT
http://tent1000.com/

星川 哲視

トリニティ株式会社 代表取締役 NuAnsブランドプロデューサー。2006年にiPod、Mac周辺機器を販売する会社を立ち上げる。その後オリジナルブランドの「Simplism」や「EVENNO」製品を筆頭にデザイン雑貨やデジタルガジェットなど「自分がほしいカッチョイイもの」を探し続け、NuAnsブランド立ち上げ、日本初のContinuum for Phone対応Windows 10 Mobile搭載スマートフォンを経てNuAns「NEO」に辿りついた。


青木 亮作

株式会社テント インダストリアルデザイナー・アートディレクター。オリンパスイメージング株式会社、ソニー株式会社にて、録音機器やカメラ、PCおよび周辺機器のプロダクトデザインをはじめ商品企画や戦略を行なったのち、2011年から治田 将之とともにTENTを設立。「見て楽しく、使うほどに愛着が湧くものづくり」をテーマに、プロダクト開発を中心に据え、商品企画、パッケージ、Web、アプリUI、展示空間プロデュースなど、コンセプトからのトータルなデザインを得意としている。


治田 将之

株式会社テント インダストリアルデザイナー・アートディレクター。多摩美術大学卒。デザイン事務所、生活雑貨メーカー勤務を経て、フリーランスとして家電機器、インテリア用品を中心にプロダクト、パッケージ、カタログまで多岐にわたるデザインを手がける。2011年から青木亮作とともにTENTを設立。「見て楽しく、使うほどに愛着が湧くものづくり」をテーマに、プロダクト開発を中心に据え、商品企画、パッケージ、Web、アプリUI、展示空間プロデュースなど、コンセプトからのトータルなデザインを得意としている。


TEXT BY MASASHI TAKI
PHOTO BY MOEKO ABE
EDITING BY KEISUKE TAJIRI