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2015.11.12

フリマアプリのサービスデザイン・UXとは – ユーザーファーストを体現する「フリル」に問う

スマホ時代のCtoCビジネスを象徴するのがフリマアプリだ。ネット上のCtoCビジネスは、PC時代のネットオークションから、スマホ時代に入りその勢力図を変えつつある。このフリマアプリには、スマホという日々持ち歩くデバイスならではのサービスデザインやユーザー体験(UX)があり、今までのCtoCビジネスにない独自の考え方が存在するだろう。こういったフリマアプリならではのサービスデザインやUXは果たしてどの様なものか。それを知るため、その最前線にいるフリマアプリ「フリル」を運営するFablicのUXデザイナー塚由恵介氏に話を伺い、スマホ時代、そしてフリルならではのサービスデザイン、ユーザー体験に迫った。

フリマアプリの原点はリアルにあった

フリルは、フリマアプリの中でも最初期の2012年にサービスを開始し、現在では400万ダウンロードを超える人気サービスだ。黎明期にこの分野でサービスを開始した同社にとって、フリマアプリとは何か。ネット上での購買体験ゆえECやオークションと比べてしまうが、その原点はあくまでリアルのフリマにあるという。

「リアルのフリマでは、商品を通したやりとり自体が楽しい体験で、売った人もハッピーになるし、買った人もいいものを安く買えてハッピーになるといった、取引自体に素晴らしいユーザー体験があると考えています。フリルのサービスはその価値を提供しているんです。」と塚由氏は語る。

ではリアルのフリマを参考にすることでどの様な特徴が生まれてくるのだろうか。

「リアルのフリマでは広ければ広いほどワクワクするし、何でもある感じがしますよね。それをフリルに置き換えると、サービスの規模感を出さないといけないことにつながります。また、入って閑散としていたら買い物する気持ちも薄れてしまいますよね。だからしっかりと楽しげな感じにする必要があります。そういった元にあるユーザー体験をWebに持ってくることは意識しています」

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このようにリアルのフリマをベースに、そこから多くの要素を取り入れているフリル。とはいえ、Webだからこそ実現できるメリットもある。例えば、誰でも参加できるし、いつでも見られるといった時間や場所の制約なく楽しめるというのはWebならではだろう。

また、Webだからこそ実装できた機能もある。フリルではフォローとタイムライン機能がそれにあたるだろう。フォローは、いわゆるSNSのようにユーザーをフォローできる機能なのだが、フリルの場合では服の趣味が合う人であったり、服のサイズが近い人をフォローすることで、その人が出品する服を買うといったエコサイクルが生まれているという。

タイムライン機能は、好きなブランドをフォローする機能で、自分に興味のある情報しか流れてこないタイムラインを作ることが可能となる。これら2つの機能は、まるでSNSのように、自分が気になる情報を流してくれる場としてフリルが機能し、結果として長く滞在してもらう施策となっている。

しかし、他方でネットゆえの制約も生まれてくるのも事実だ。その場で決済して持ち帰るわけではないので、決済・配送というリアルにはない工程を踏む必要がある。この問題について塚由氏は

「決済・配送に関しては日々改善を進めていまして、最近だとキャリア決済に対応したりとか、ヤマト運輸さんと提携したりしています。この部分でユーザー体験が損なわれるのは構造的な問題なので、なんとかしてそこを解決できればと日々考えています」と語った。

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女性は、1年後には50%の服をもう着ない

ECやオークションとは異なり、取引自体に価値を持つフリマアプリ。その中でもフリルが他のフリマアプリと大きく異なるのは、女性をメインユーザーに据えている点だろう。そんな独自のターゲット層を持った背景には、サービス開始時の”ある気づき”があったという。

2012年当時、女性はTwitterを使ってものを売買している人が多かった。そこでなぜオークションを使わないのかという気づきが、3年前にフリルを始めたきっかけになったという。また、マーケティング的にも、サービス当初に必要な熱量を持たせるのに女性の口コミが有効だと考え、そこにターゲティングすることを狙ったからであった。

結果的にはこれらの狙いが功を奏し、今の400万ダウンロードという規模感につながっている。しかし、女性をメインターゲットにすることで、男性とは異なる価値観の理解を要したともいう。

「デザインに関していうと、女性は見栄えにも価値を見いだす方が多いんです。逆に、男性は機能に価値を見いだす人が多く、極端な話どんなに見栄えが悪くても、ちゃんと使えて価値があればいいという考え方なんですね。ただ、女性はそれを使っている私というところにも価値を持たれる方が多いので、デザインは非常に重要な要素ですね」

また購買力という点でも男性とは異なるという。

「女性は服を買う量が男性と大きく異なります。おしゃれしないといけなかったり、女子会に同じ服は着ていけないなど、男性より必要に迫られる部分も多いですし、服の出入りも激しいですね。実際、フリルのユーザーさん752人にリサーチしたところ、去年買ったファッションアイテムが今年使用される確率は、50%しかいないという結果が出たほどです」

こういった女性ならではの特徴もつかんでいたフリルだが、今年7月に女性限定に絞っていたユーザーを、男性にも広げる発表を行った。リブランディングの一環として行われたユーザー層の拡大だったが、この決断には多くのリサーチと、ユーザーとの対話を要したという。

「とにかくフリルを愛してくれているユーザーさんにヒアリングを繰り返し、深いところで共感してくれている”フリルの価値”を探りました。その価値を抽象化し、再解釈したらどのような価値にたどり着くのかと考えると、安心・安全というところはやはり重要な要素でした」

以前よりカスタマーサポートの点では、手厚い親切な対応ということで評価を得ていたそうだ。もちろん、女性限定という点で安心・安全が担保されていた部分もあったが、その安心・安全は他の形で担保されれば、ユーザーは皆残ってくれるだろうと考え、女性限定をなくすという決断に至ったという。

結果的にはユーザーが離れることなく、男性ユーザーの分が純増したということなので、このリブランディングは見事に成功したといえるだろう。

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ユーザーファーストを体現する組織

リブランディング時に、ユーザーへのヒアリングを繰り返したフリルだが、同社のユーザーを重要視した姿勢は、このリブランディング時に限った話ではない。フリル内部の特徴として、社内の半分がフリル内のユーザーから募集した、カスタマーサポートチームという点がある。つまり、開発する人のすぐ近くに常にユーザーがいるのだ。

「UIのちょっとした変更でも、とりあえずカスタマーサポートにいるユーザーさんに見てもらって、反応を間近で見るようにしています。もちろん、私たちの中に仮説はあるのですが、ユーザーさんに聞いてそれを検証するというのを意識しています」とユーザーファーストの姿勢を明らかにしてくれた。

また、このユーザーファーストの姿勢は塚由氏に限った話ではない。半数がユーザーという環境もそうだが、社長はもちろん、エンジニアのようなデザイナー以外の人にもユーザーファーストの文化が根付いているという。

例えば、インタビューやアンケートで集めた調査情報は、個人情報が特定されない範囲で社内ネットワークで共有され、調査者以外でも統計分析等を目的とした閲覧ができるようにしている。またユーザーに対する理解の深さを表しているのが、フリルにペルソナ設定が存在しないということだ。

社内の全ての人がユーザーに対して深く理解し、共通認識を持っているため、改めてペルソナというかたちで確認する必要がないということだという。「組織としてユーザーファーストを体現している」と塚由氏が語るのも、過言ではない。

塚由氏自身、Fablicに入る前はフリーのUXデザイナーとして活動していたのだが、その中で、大きな組織ほどユーザーとの距離が遠く、ユーザーファーストであるべきサービスが、ユーザーファーストでない実態に疑問を抱いていたという。それを解決できる環境に魅力を感じ、このチームに入ったというのだから間違いないだろう。

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2012年という黎明期からこの分野に参入し、ユーザーファーストの視点に強みをもつことで、女性を中心としたユーザー像を社内全体でしっかりと理解しているフリル。この強みをいかして、フリルは今後どこへ向かうのだろうか。

「UXマップを作ってわかったのですが、慣れているユーザーさんほど購入のハードルが低いんです。逆に、一番ハードルとなる初回の出品を超えてもらうため、様々な改善を続けています。例えばUIでは、項目が多く見えないようにすることや、配送元の地域等は入力を不要にするといった地道な改善を行なっています。

また、商品タイトルを20文字に抑えているのもそのためです。20文字あれば説明できますし、余裕があると、そこに頭を悩ませる原因になるからです。買ってダメでも出品すればいいという安心感があり、そのサイクルがうまく機能することで、ユーザーさんの生活を変えているという実感をもっています。

フリルはこれから、特にファッションの分野に特化しサービスを強化していきたいと思っています。リアルのフリマも同様ですが、ファッションというのがやはり主戦場になるので、僕らはそこで一番になりたいと考えています」

塚由恵介

株式会社Fablicデザイナー。株式会社we-bにて”感動コレクション log”のクリエイティブディレクターを経た後、フリーランスデザイナーとして独立。博報堂DYホールディングスやリクルートホールディングス、株式会社カヤックなど多数のクライアントにサービスのUXデザイナー/UIデザイナーとして従事。現在は株式会社Fablicに所属し”ファッションフリマアプリ FRIL”のUXデザイン、UIデザインを担当。

PHOTOGRAPH BY KAZUYA SASAKA
TEXT & EDITING BY KAZUYUKI KOYAMA